介護業界の人間関係の問題とは。トラブル例と円滑にするための対処法

介護職の基本は、報告・連絡・相談と連携です。複数のスタッフが同時にかかわる施設やデイサービスはもちろん、基本的には単独行動の訪問介護でも、タテとヨコの連携を必要とします。

連携を取る上で大切なのは、なんといっても人間関係ですよね。

仕事を円滑に進めるためには、人間を円満に保ちたいものです。介護職ならではの職場環境の特徴や、関係を良好に過ごすコツをお教えしましょう。

年齢も経験もばらばらな介護職。互いの価値観を知ろう

事務や営業などの一般職なら、歳を重ねるごとに偉くなっていく、年功序列が多いでしょう。ですが、介護職では中途採用や主婦層の就職も多く、年齢も経験もばらばらなのが当たり前です。

年齢も経験も違う人々と良好な人間関係を築くためには、互いの価値観を知ることが重要です。

同じ職場で働く人たちの、それぞれの立場や考え方、価値観などを考察してみましょう。人間関係を円滑にするための糸口は、きっとそこに隠されているはずです。

年上の方が後輩になった場合

介護職では、年齢が上の方が後輩になることがよくあります。一般職を経験してから介護職へと転職された方や、主婦として長く過ごされてきた方が転職されるケースも多いからです。

専門学校や大学で福祉を学んだ方は、卒業後すぐに介護職に入職すれば、20代で責任ある立場になることも珍しくありません。対して、30代まで一般職や主婦をされていた方が新しく資格を取り入職すれば、その時点ですでに相応の年齢差が生じます。

時には、「介護職としての未経験はまったくない新入職員が、まるで親のように年代だった」なんてこともあるでしょう。

年上の方を後輩に持つと、ふとした時に「年下だと思って、侮られている」という態度が見えることがあるかもしれません。「仕事の注意をしても、聞き流される」ということもあるかもしれませんね。

人生年齢を重ねてきた方は、ご自身の今までの経験にプライドを持っています。「介護職としての経験はなくても、今まで他のことをしてきた経験がある」という気持ちが強く、それが年下の先輩への態度へも現れがちです。

人間が年をとるということは、どうしても超えることができない壁です。若い方は「仕事では、年齢が上だということは関係ない」と思うかもしれませんが、頭から否定してはいけません。

年上の後輩と円滑な人間関係を築きたいと思うのなら、相手の人生経験に敬意を払うことも必要です。

年下の方が先輩になった場合

少子高齢化社会が進行し、高齢化が社会問題として取り上げられるようになった昨今では、介護関連資格の教育体制が大分整ってきました。介護が産業として考えられるようになったことも、理由の一端でしょう。

そのため、福祉大学や専門学校なども増加し、介護の業界にも若い方が増えてきています。一昔前は、資格制度も介護保険制度すらもなく現場経験のみでしたから、大きな変化ですよね。

その反面、中途雇用でも門戸が広いことや、資格を取得しさえすれば職にあぶれることはまずないことなどから、一般職や主婦を経験してから介護業界に入職される方も多くいらっしゃいます。

そうなると、必然的に、自分より若い方を先輩や上司に持つことになります。

若い方は活気があり、精神的にも肉体的にもはつらつとしています。向上心や正義感も強く、職場環境や介護サービスの改善にも意欲を持つ方も多いでしょう。言動が元気なあまり、接遇態度や言葉遣いなどが目に余るようなことも考えられますね。

ですが、そこで、「若い子はこれだからいけない」と思ってはいけません。若い頃から福祉業界への就職を志し、専門の学校を卒業して資格を取得したということは、しかるべき教育を受けているということです。

数十時間の研修を受ければ取得できる程度の資格を持っている人と、国に規定されたカリキュラムを修めて数年もの期間を福祉の勉強に費やしてきた人とでは、やすやすとは超えられない隔たりがあります。

年下の上司を持った方は、まず、「年下だからといって、社会的に下というわけではない」ことを理解しておきましょう。

先輩の技術が未熟な場合もある

介護保険は、2000年の4月に誕生したばかりの制度です。歴史が浅く、そのために制度が整っていない多々部分があります。また、介護保険法は3年ごとに見直しがおこなわれることになっており、度々ちょっとした変更があります。

そんな背景事情もあり、昔は今ほどに、介護職の教育体制が整っていませんでした。

今よりも無資格でも仕事ができる場所が多く、家政婦と同じように見なされていた頃もあります。介護福祉士資格も、少し前までは、現在よりもずっと楽な条件で資格取得ができたのです。

そんな時代の流れを見てみると、理解がしやすいでしょう。経験年数と介護技術とが、必ずしも比例しない場合があるのです。

昔から介護職をしている方でも、技術的には我流が強く非論理的で、未熟な場合も多くあるのです。しかるべき学校で教育を受けてから入職した方のほうが、理にかなった技術が身に付きやすい面もあります。

慣れているやり方に固執しすぎて、新しい理論や技術が見につかない場合もあります。特に医療系の知識が必要なことについては、その差は顕著かもしれません。

良好な人間関係を築くには、自分を知り、相手を理解しよう

自分一人でできる事業を立ち上げるのでない限り、どんな職場で仕事をしても、他スタッフとの連携が必要になります。自分より年下の先輩や、年上の先輩がいても、「それが嫌だから、この職場では仕事ができない」とは言えないでしょう。

年齢や介護技術、経験などが違う相手とも、上手な人間関係を築けるポイントを知っておきましょう。

年下の先輩と接する場合

「職場の先輩が年下で、仕事がしにくい」という方は、まずご自身のスキルや経験について、まず振り返ってみてください。

おむつ交換や入浴介助など、身体介護に重きを置く職場では、一般的な人生経験はあまり役に立たないことが多いです。談話能力なども、認知症や精神疾患を患った方には、営業職や井戸端会議などで培った経験はそれほど活用できません。

食事作りやお掃除など、生活支援が多い職場でも、健常な方を相手にする場合と、介護が必要な方を相手にする場合では、気をつけなくてはいけないポイントが違います。また、自分の家族を相手にする主婦業とも、勝手が違います。

年齢が上の方は、「介護職としての経験は少ないし、介護職としては未熟だけど、人生経験は私のほうがあるんだから」と思ってしまいがちです。年下の先輩がいる職場でやりにくさを感じている方は、まず、そのような考え方を捨てましょう。

仕事場では、仕事として必要な技術を持っていなければ、職員としては使い物になりません。仕事と関係のない技術や経験に秀でていても、その職場ではなんの関係もないのです。

それらを理解したうえで、真摯に仕事に臨むことができれば、年下であろうとも先輩のことを尊敬できるはずです。こちらが相手を尊敬していれば、相手も自分の良いところを見てくれるようになるはずですよ。

年上の後輩と接する場合

「職場の先輩が年上で、仕事がしにくい」という方は、相手の方の仕事以外の面を見てみてあげてください。

その方は、介護職に入職される前に、どのような職歴があるのでしょうか。また、結婚歴や出産経験、育児経験などを、年齢や雑談からうかがい知ることができることもあるでしょう。

もしかしたら、あなたの今までの人生では経験していないようなご苦労を、その方は経験しているかもしれません。仕事には必ずしも関係ないことですが、その人と上手な人間関係を築くためのポイントは、そういったところに詰まっています。

自分がしていない経験をしている人は、自分とは違うものの見方や考え方ができるはずです。仕事には直接関係がなくても、あなたがこれから先の人生を生きていくうえで有利になるさまざまな情報を、その人が持っているのかもしれませんよ。

人間関係にうんざりしている時は、少し距離を置こう

人間関係の悩み事は、なかなか解決しにくいものです。これからも同じ職場で働き続けようと思うのなら、なおさらのこと。フルタイムで仕事をしていると、趣味などの時間もとりにくく、ストレスを発散させることも難しいときがありますよね。

そんなときは、煩わしい人間関係から、少しだけ距離を置いてみませんか。

仕事の時間と自分の時間を分ける

休憩時や退勤まぎわの、ちょっとした雑談や、なにげない世間話をしなくてはいけない時間が、気持ちの負担になっている場合もあります。相手の雰囲気を読んで、相手に合わせた話をしようとすると、どうしても気疲れしてしまいますからね。

仕事の申し送りや相談などは避けるわけにはいきませんが、雑談や世間話は、そうそう付き合う必要もありません。「疲れたな」と思った時は、無理に付き合わず、自分の時間を大切にさせてもらいましょう。

ただし、なんの理由もなく避けてしまうと、今後の人間関係に亀裂を生じさせてしまうかもしれません。上手な理由を見つけましょう。

学生とは違い、職場は大人の集まりです。「家の用事があるので、仕事が終わったら早く帰らなくてはいけない」などの理由をつけておけば、談話に参加しなくても深く詮索されることもないでしょう。

人付き合いの少ない業種に変更する

どうしても現在の職場での人間関係に馴染めない場合は、思い切って転職や移動を願い出るという手段もあります。

もちろん、どんな業種に就いたとしても、報告・連絡・相談と、最低限の連携は必要です。ですが、その中でも、比較的人付き合いが少なくて済む業種というものもあります。

介護職のなかでは、単独行動の多い訪問介護では、施設よりもスタッフ同士の連携が薄いといえるでしょう。多くの場合、自分ひとりでご利用者さまのお宅へ伺い、介護のお仕事をして事務所に帰ります。待機時間はありますが、活動中は一人です。

また、グループホームも、特別養護老人ホームなどに比べると、スタッフの人数は抑えられています。交代制なので複数のスタッフが関わることにはなりますが、入所されている方の上限が少ないので、スタッフの数も少ないのです。

施設によって、ビジネスライクなところもあれば、アットホームな雰囲気のところもあります。スタッフの人間関係は、職場全体の雰囲気に反映されます。転職を考えるなら、見学させてもらうのがお勧めです。

相手を敬う気持ちを忘れないようにしよう

古来より、人間は群で生活する生き物です。単独で生き抜こうとするよりも、集団で助け合いながら生きる方が、生き延びていきやすいからです。自分一人よりも、二人、三人と協力し合った方が、大きな力を生むことができます。

そのためには、互いの関係を良好に保ち、協力し合える体制をつくることが重要です。

人間関係を良好に保ちたいなら、相手の立場や価値観を尊重することを、忘れてはいけません。どんな人だって、自分の人生にはプライドを持っています。それを踏みにじるような人とは、うまくやっていけるはずはありません。

介護職は、スタッフ間の連携が重要な職場です。人間関係が悪いと、介護度の重い方を介助するときに協力してもらったり、苦手な仕事で助けてもらったりすることがしにくくなってしまいます。休暇の調整などでも、困難を感じることでしょう。

友達同士ではないのですから、過剰な慣れ合いは必要ありません。ですが、仕事を円滑にするためにも、適度な距離感を保った良好な人間関係を築いていきたいですね。