仕事のストレスが心身へ与える影響。唐渡雅行院長先生インタビュー

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唐渡 雅行先生

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唐渡 雅行先生

とわたり内科・心療内科

「会社に行きたくない」「眠れない」「仕事の効率が上がらない」といった不調が続くなら、それは仕事のストレスからくる心身の不調かもしれません。

ストレスを感じても、すぐ気分転換できたり一晩眠ってリフレッシュできたりするなら問題はありません。

しかし、仕事上で受けているストレスが強すぎると、自律神経のバランスが乱れたり脳の機能が低下したりして、うつ病など心の病気にかかりやすくなってしまいます。

今回は、内科と精神科のスペシャリスト「とわたり内科・心療内科」唐渡雅行院長のお話をまじえ、職場・仕事からくるストレスによる心身の不調について考えてみたいと思います。

唐渡雅行先生にインタビュー。仕事のストレスと心身の不調の関係とは

編集者顔画像

唐渡院長先生、本日はどうぞよろしくお願いいたします。

唐渡院長写真

よろしくお願いいたします。

併設されている精神科と心療内科あわせて、職場や仕事にかかわる相談はどのくらいありますか?

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メンタル面で相談にいらっしゃる方の9割くらいが仕事に関するものです。月に100件くらいはいらっしゃいますね。相談数は漸増している印象があります。

以前はプライベートなことに関わる相談が多かったのですが、今は仕事に関するものが多くなりました。

あとはADHDを含む発達障害に関連した相談もあります。会社から受診を促されたり、ネットで調べて「自分もそうじゃないかな」と思い受診されたりという方が多いです。

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全体の9割も!想像以上にみなさん仕事について悩まれているんですね‥。

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当院の立地(名古屋駅から徒歩6分のオフィス街)も影響しているかもしれませんけどね。

人間関係、仕事量、仕事内容など、どのような悩みの相談内容が多いのでしょうか。

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「どれか」というよりも複合的なものが多いですが、一番はやはり職場の人間関係の相談ですね。業務量が多くても、コミュニケーションがしっかりととれていればうまくサポートし合って病気にならずに済むものですが、問題があるとそこから負担が増えてうつ状態になることが多いでしょう。

業務量に関しては働き方改革の件もあって企業側も対策をしているので、以前のようにメチャクチャなものは減ってきていますね。でも、残業量が減っても、病気は減ることはないんですよね。

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人間関係、と言いますと、やはり対象は…

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上司、先輩、同僚ですね。「後輩が‥」というのは少ない印象です。

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ということは、新入社員のような若い方の相談が多いのでしょうか。

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そうとも限りません。若い方は20代から、働き盛りの40代、50代の方もみえます。どの年代が多い、という傾向はないんです。

どのような肉体的、または精神的な不調で受診される方が多いですか?

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うつや不安でいらっしゃる方が多いですね。このふたつは背中合わせなので、ミックスしてうつ状態であり不安がつよい状態である、という複合的なものになります。

精神的なものは・・憂うつ気分、興味がわかない、など。
肉体的なものは・・不眠、食欲がわかない、疲れやすい、だるい、意外と多いのが頭痛です。背中や腰といった身体の痛みもあります。

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気分の落ち込みや不眠、食欲不振などはイメージにありましたが、身体の疼痛は意外でした。

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整形外科などにかかっても原因がわからなくていらっしゃる方です。心身は相関しているので、「身体の方に症状がつよく出ていて、実はうつだった」ということはよくあるんです。

あとは動悸もありますね。これは自律神経からくるものです。

先生がお考えになる、「こうなったら相談に来てほしい」という症状はどのようなものがありますか。

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早く受診し、早く治療を始めると、当然早くよくなることが期待できます。悪い状態が長く続かないうちに、ということを伝えたいです。

人間なので1日2日の不調は仕様がないです。でも、疲れやすい、だるい、頭痛といった「なんだかおかしいな」ということが2週間から4週間続くようであれば、早めに受診してほしいと思います。

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「いつもと違う」という気付きが大事なわけですね。

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数年前と違って、自分で気付いて受診にいらっしゃる方は多いですけどね。うつなどの精神的な症状について認識がひろまっているので。

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あとは人生における優先順位がかわったことも、自分から受診される方が増えた理由だと思います。若い人だけでなく中高年も含めて、仕事!というよりは自分の健康やプライベートの充実を優先するようになったのでしょう。

昔のように、気付かないまま「なんでこんなにひどくなるまで放っておいたの」という人は減りました。

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働き方の意識の違い…もうマンパワーの時代ではないということですね。

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まぁ、いいんじゃないですかね、それで(笑)

快方された患者様の例をお聞かせいただきたいです。

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みなさん非常によくなられます。というのも、基本的には治る病気なんです。もともとの気質に問題がある方は例外にはなりますが、もともと健全な方が一時的にうつ状態になってしまったという場合は必ず元の状態に戻るんです。

よくなるための医療は進化し、治療法の選択肢も増えているので、「必ず治る」と考えてほしいのです。

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「必ず治る」悩んでいる方には非常に心強いお言葉ですね。

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そういう気持ちが大事なんです。希望と目標を持って、取り組んでいきましょう。

治療法にはどのようなものがありますか?

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今は非常に優秀なお薬が多く、例えば頭痛や慢性疼痛でも、ある特定の抗うつ薬を使うことによって驚くほどよくなります。何か月と続いた症状やどの病院にかかっても治らなかった症状が、早いと1、2週間で夢のようによくなりました、ということだってありました。

お薬を嫌がる方もいらっしゃるので、薬での治療のメリットとデメリットをしっかりお話しして、了解してもらって、ということを徹底しています。

適切な薬物療法の介入は非常に効果的な場合が多いんです。あまり心配なさらず、納得されたうえでいっしょに治療に取り組んでいきましょう。

唐渡院長インタビュー写真2

唐渡院長写真

あとは心理療法として、考え方や受け止め方、つまり「認知のゆがみ」を治す認知行動療法を併用するというのも非常に意味があります。

なので、クリニックを選ぶときの目安として、薬物療法だけでなく心理カウンセリングも受けられる体制が整っているところ、というのは大きなひとつの目安になるかな、と思います。

先生が患者様に必ずお伝えしていることは何ですか。

唐渡院長写真

「通院を継続してください。」とは一番お伝えしていますね。来なくなってしまうと、どうしようもありません。助けてあげられないのです。来ていただければ、必ずよくなるように努力します。これはもう私からの「お願い」ですね。

特に初診などで調子が悪いという方には、毎週診て、細かくケアします。初期治療、適切なケアを行えば必ずよくなりますし、再発を防げます。

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毎週診ていただけるのはありがたいですね。

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人間って、一週間あったらいろいろなことがあるじゃないですか。それを「1ヶ月後にまた」ということでは、忘れてしまいますよね。マメに、できるだけ短い間隔でいっしょにがんばっていきましょう、とお伝えするんです。

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通いやすい空間づくりも徹底されているんですよね。

唐渡院長写真

生花を花屋の方に飾ってもらったり、スタッフにも衣替えしてもらったり。おかげで素敵な空間になってます。

最後に、先生がお考えになる職場や仕事にかかわるストレスについて、お聞かせください。

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いわゆるライン職の方たちの、新しく入社した人や部下への配慮が大事かな、と思います。個々のセルフケアが大事なのは間違いないのですが、上司そのものがストレスになっている場合はどうしようもないですからね。

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上司がダメだからその上に相談して…といっても、上はもう代表しかいなかったり、上司のその上司もダメだったり、ということは有り得ますもんね。

唐渡院長写真

産業医や保健師、人事や総務へも相談しましょう、ともアドバイスしますが、どうしても仕事内容や職場環境とミスマッチだと、転職の背中を押すこともあります。

でも、なかなか大変ですよね。調子が悪い時にあわてて転職するのは。なので専門医と相談しながら調子をよくしつつ、仕事とのバランスをとっていけるよう、お手伝いします。

女性の方ではお子さんのことを含めて家庭の問題、他には親の介護といった悩みを抱えている方もいますが、現代人で仕事をされている方、特に男性のストレスの原因はほとんどが仕事です。聞くまでもないんです。だから、最初に「仕事は何が問題?」と聞くんです。

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今の20代、30代の方は特に、仕事・プライベート・家庭とバランスよく継続したい人も多いので、やはり会社側はそういった人をどう抱えていくかというのは大事ですね。

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人生の三分の一は仕事です。あとの三分の一はプライベートで、あとの三分の一は睡眠時間。いろんな意味で人生に大きく作用するのが仕事だということは間違いないことです。

いい職場環境をどうやって実現していくかは、今は企業のトップも真剣に取り組まれています。あとは個人が、過剰適応しようとしすぎないこと。自分の身の丈にあった仕事とのかかわり方が大切なのです。

真面目な方、抱え込んでしまう方が自分の中で処理しきれず、バランスを崩してしまうという方が増えてきているように思います。とにかく、よくなるまでは「上手に息抜きをしながら」が大事ですよ。自分の気質をよく理解して、ストレスを溜めこみやすい人はそういったスキルを身に着けていくことです。

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「がんばらなきゃ」という考え方を、ご自身がどこまで変えられるかが重要なのですね。

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あと、「運動」はすごく大事ですよ。食事、睡眠、運動は生きるうえで基本です。食事と睡眠はみなさん生きるために自然に行うことが多いですが、運動はそうじゃない。

「毎日20分通勤してます」という患者さんもいらっしゃいますが、「それは移動です」と返しています。(笑)

運動すると脳内物質のセロトニンが増えます。抗うつ薬の中身のほとんどはこのセロトニンです。有酸素運動がお薬と同等の効果があるという論文もあるくらいなんですよ。なので、心拍数がプラス5割くらいになる有酸素運動を習慣にしてほしいですね。

インタビューを終えて

一番驚いたのは、全体の9割、月に約100件もの仕事に関する相談を受けられているということでした。唐渡院長先生は産業医も兼任されているので、そちらでの相談を含めるともっと数は増えるとのこと。それだけ仕事について悩み、相談に訪れる人がたくさんいるんですね。

今回お話を伺った診療室では大きな窓から陽が差し込み、テーブルにはきれいなお花が飾ってありました。

診療室の写真

そして、唐渡院長先生は終始穏やかな口調と笑顔で、そして笑いも交えてお話してくださいました。

いい意味でなんでも相談してしまう…と感じる、あたたかい空間が診療室にはありました。

とわたり内科・心療内科のご紹介

唐渡院長の写真

今回のインタビューを受けてくださった唐渡雅行先生が院長を務めるとわたり内科・心療内科は、名古屋駅から徒歩6分の所にあります。2004年の開院以来、東海三県を中心に多くの患者さんが来院しています。

診療科は、精神科・心療内科・内科・総合診療科です。

院長の唐渡先生は、名古屋大学を卒業後に内科医として医師人生をスタート、ロンドン留学、産業医の兼任を経て、精神科の勤務を経験されました。現在は、総合内科、心療内科、精神科の専門医として活躍されています。

具体的な解決策を紹介した書籍「うつ病診察最前線-再発させない治療法」や、各情報発信サイトに掲載されている情報も好評で、メディアからも高い注目を浴びている先生です。

とわたり内科・心療内科の5つのコンセプトを紹介していきましょう。

内科と精神科の専門医が統合的に診察

「心と身体は相関している、だから、心と身体を別々の医師が診たり患者さんが複数の病院を渡り歩いたりするのではなく、一人の専門医が心と身体を統合的に診ることがのぞましい。」とわたり内科・心療内科はそう考えています。

精神科の診察では、西洋医学に加えて心理療法(認知行動療法)、運動療法などを組み込んで、患者さん一人一人に合った治療法を提案していきます。

総合診療科があるところも大きな特徴です。総合診療科とは、初診をして患者さんの病名を見つけ、必要に応じて治療をしたり専門の医療機関を紹介したりする外来です。

「症状が多くて、どの診療科に行けばよいかわからない」「病気というほどではないが、まずは医療機関に相談したい」といった患者さんを診察の対象としています。

こうした受け入れ口があると、ほかの人になかなか理解してもらえない不定愁訴、検査で異常がない場合にも、気軽に相談できますよね。

また、内科では予防医療、オーダーメイドの治療などをおこなっているのが特徴で、現代人に多い生活習慣病の予防にも積極的に取り組んでいます。

患者さんがリラックスできる居心地の良い空間

とわたり内科・心療内科は、ぬくもりや癒しを感じる空間が特徴的です。

デザインしているのは、世界で活躍するアーキテクトデザイナーのアシシハラヒロコ氏。五感に訴える上質な環境が、患者さんの不安な気持ちをやわらげてくれます。

とわたり内科・心療内科の院内写真1
とわたり内科・心療内科の院内写真2
とわたり内科・心療内科の院内写真3

復職サポートが充実

とわたり内科・心療内科は、精神科、心療内科の領域で診察・治療をするだけでなく、うつ病や不安障害などで休職・長期離職している患者さんを対象に、復職サポート(リワークプログラム)を早くから導入しています。

職場へ無理に「復職させる」ことは再発につながりやすくなりよくありません。そこで、「復職させる」のではなく「復職する意志を取り戻す」ことを目的に、段階的なプログラムを組んで患者さんのリハビリテーションをおこなっています。

臨床心理士、保健師、メンタルヘルス運動指導士、スリープマスターなどのスペシャリストが在籍し、患者さんの不安な気持ちにしっかりと寄り添ってくれます。

心理療法や心理教育に焦点を当てたこのリワークプログラムは「日本うつ病リワーク研究会」において高い評価を得ています。

必要に応じて統合医療を実践

とわたり内科・心療内科は、西洋医薬と補完療法(漢方療法、栄養分子療法など)を組み合わせた「統合医療」もおこなっています。

西洋医薬と補完療法、それぞれの良いところを組み合わせ、患者さん一人一人に合わせたオーダーメイドの治療をおこなうことで、治療の有効性を高める効果が期待されます。

他病院と連携したスムーズな病診が可能

院長が在籍していた「名古屋大学医学部附属病院」「名古屋第一赤十字病院」など、高次機能病院と提携しており、必要に応じてスムーズな病診連携をおこなっています。

職場・仕事に原因がある精神疾患の割合、近年の推移

職場・仕事のストレスが原因で、心身に不調があらわれるようになった人、うつ病、不安障害などの精神疾患にかかる人は増えてきています。

デリケートな問題ということもあり人知れず悩んでいる人が少なくありません。しかし、実際には多くの人がストレス、心の不調を感じているのです。

仕事上のストレスが原因で精神疾患を発症した人の数を、目安として、厚生労働省が発表しているデータをいくつか取り上げてみたいと思います。

厚生労働省が公開している過労死等の労災補償状況によると、「精神障害に係る労災請求件数」は年々増加していることがわかります。平成29年度では、過去最高の1,732件(うち労災請求が認定されたのは506件)となっていました。

労災請求件数の推移グラフ
(引用:精神障害に係る労災請求件数の推移 – 厚生労働省)

労災認定の対象となるのは、事故や災害の体験、仕事上の失敗、仕事の過度な負荷…といった「業務による強い心理的負荷」が原因で特定の病気を引き起こした場合や自殺をした場合、とされています。

しかし、このように公で発表されているケースは氷山の一角で、仕事の強いストレスで心身の不調をきたした人がたくさん潜在しているのではないか、ともいわれています。

また、厚生労働省が毎年実施している労働安全衛生調査の調査結果を見てみると、平成29年度は、「メンタルヘルスの不調によって連続1か月以上休業した労働者」は全体の0.4%、退職した労働者は0.3%を占めていました。

仕事上の強いストレスを感じているのは全体の約6割

全国の労働者の皆さんは、特にどんな時ストレスを感じているのでしょうか。「労働安全衛生調査」によると、ストレスの内容は、次の順で多くなっていました。

  1. 仕事の質・量(約63%)
  2. 仕事の失敗、責任の発生等(約35%)
  3. セクハラ・パワハラを含む対人関係(約31%)
  4. 昇進、昇格、配置転換など役割の変化(約23%)

しかも、仕事や職業生活に関してそのようなストレスを強く感じている人は、労働者全体の約60%にものぼるということです。

(参照:平成29年労働安全衛生調査(実態調査)_結果「強いストレスとなっていると感じる事柄がある労働者割合の推移」)

いつもの自分と違うと感じたら専門医へ相談を

唐渡雅行先生の写真

日本は、社会の多様化によって「うつ」になりやすい土壌ができているのではないか、ともいわれており、現在は精神疾患が「五大疾患」のひとつに加えられるほどありふれた病気になっています。

長時間労働や仕事の負担、対人関係の不安は決して特殊なものではなく、誰もが日常的に経験し得るものです。また喜ばしいはずの昇進や昇格すら、プレッシャーがストレスに変わってしまいます。

現代に働く日本人は、このように常にストレスにさらされており、仕事上のストレスから自律神経失調症、不眠症、うつ病などを経験することは、特に珍しいことではなくなってきました。

これらの不調は、こじれてしまうと自分で体調をコントロールすることが難しくなる可能性もあるので、早期発見と早期治療が必要です。

「いつもの自分と違うな」と感じたら、その時点で気軽に専門医へ相談してみましょう。

この記事の専門家
唐渡 雅行先生

唐渡 雅行先生

とわたり内科・心療内科

名古屋大学第一内科、北林病院の心療内科などに勤務した後、2004年にとわたり内科・心療内科を開院。著書は「Annual Review血液1993&2002」(中外医学社)、 「今日の治療指針2005年版」(医学書院)など多数。
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