介護職のセクハラ被害の実態。ヘルパー必見の性的嫌がらせ対策

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「要介護者が介護職に虐待されている」というニュースが、世間を騒がせました。虐待の内容には、暴力や暴言のほか、性的虐待も含まれています。

ですが、性的な被害を受けるのは、要介護者だけではありません。介護職が被害に遭っている実態も、実はたくさんあるのです。暴力や暴言も同様ですが、「仕事だから仕方ない」と思っている方も多いはず。

黙っているだけでは、心も体も病んでいきます。「被害に遭っているのは自分だけ」と思わずに、自分の身を守れるようになりましょう。

実は多い介護職のセクハラ被害。実態を知ろう

介護職が受けるセクハラは、一般職の方が受けるセクハラとは、すこし性質が違います。我慢も時には必要ですが、黙っているだけでは、度を越した被害に遭ってしまう場合もあります。

まずは、一人で抱え込んでしまうことをやめましょう。他の人がどのような被害に遭っているのか、事例の一部をご紹介します。

要介護者から受けるセクハラ被害

介護職の仕事は、生活に関わる全般の支援です。ですから、必然的に、人の体に触れることが多くなります。

歩行介助に付き添ったり、移乗のために抱きかかえたりすることは、介護職にとっては当たり前の作業ですね。トイレやお風呂のお手伝いで下半身や裸を見ることも、ただの仕事です。慣れてしまえば、なんの感想を持つこともありません。

介護職にとっては特別でもなんでもない距離感ですが、一般の方にとってはそうではありません。だからこそ、勘違いをして気軽にセクハラ行為に及んでしまう方が多いのでしょうか。

介助をしようと対面に立った時に胸に触られたり、後ろを向いたときにおしりを触られたりする被害は、特に多く見られます。移乗介助の時に、抱きついたまま離れない方や、抱きついたその手でおしりを揉んでくる方もいます。

ベッド周りでの介助をする際には、ベッドに引き込まれそうになったり、添い寝を強要されたりする被害もあります。また、ベッドサイドに座った要介護者が、前にしゃがんだ介護職の股間を、足で撫でたり蹴ったりすることもあります。

直接触られることだけが、セクハラ被害ではありません。局部を触ることを言葉で強要されたり、「自分が自慰行為をするのを見ていろ」と言われたりすることもあります。言葉で性的な行為を強要することも、立派なセクハラです。

女性職員に対するセクハラが多いですが、実は男性の介護職が被害に遭う場合もあります。女性の要介護者から抱きつかれる程度なら可愛いものですが、股間を握られたり、卑猥な言葉を言われたりするのは、たまったものではありませんよね。

要介護者から受けるセクハラ被害でもっとも厄介な点は、「相手は、要介護者でしかもお客様だ」ということです。下手に振り払ったり抵抗したりすれば、うっかりケガをさせたり転倒させたりしてしまいます。

人によっては、その点を十分に理解してセクハラ行為に及んでいる場合もあります。弱い立場を逆手にとられていると思うと、余計に腹立たしいですね。

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要介護者の家族から受けるセクハラ被害

セクハラをしてくるのは、要介護者ばかりとは限りません。その家族からセクハラ被害を受けるケースもあります。家族からのセクハラ被害は、主に、家庭に伺って介護をする訪問介護でおこるものです。

介護保険では、本来、要介護者本人のお世話のみが保険給付の対象になります。当然、仕事中の大部分の時間は、要介護者と関わる時間になります。

ですが、家族が家にいれば、何かと家族と接触する機会は多いものです。家族に介護方法をレクチャーしたり、着替えなどを用意してもらったりすることもあります。作業後に記録には、家族と情報交換をしながらおこなうこともあります。

もちろん、家族がいなくても、介護職の仕事はできます。ですが、介護職へのセクハラを目的にしている家族は、必要でもない用事を作って近づいてくるのです。

介護方法を見るふりをして必要もない至近距離に寄って来たり、狭いベッドサイドをすれ違うふりをして体に触ってきたり、ちょっとした隙を狙って痴漢のようににじり寄ってきます。

家族がセクハラをしてくる場合、要介護者と違って、力の強い健常者が相手です。その恐怖感もひとしおですから、本当に冗談になりません。

我慢している必要はない。セクハラ被害を防止しよう

いくら要介護者が楽しんでいても、性的な欲求を満たすのは、介護職の仕事ではありません。なかには嫌がらせの意図を持ってセクハラしてくる方もいますが、いずれの理由でも、セクハラされる側が不快なのは変わりません。

解決するのは難しい問題ではありますが、黙って我慢していてあげる義理はありません。気持ちが病んでしまう前に、解決策を講じましょう。

服装や身だしなみに気をつけよう

まず、前提として、自分の身だしなみに気をつけましょう。制服が指定されていない職場では、特に気をつけたいところです。

体のラインが見えるような、ピッタリとした服はやめましょう。下着のラインが浮いて見えるのもNGです。胸元がのぞき込めるような、襟ぐりの広い服も避けましょう。また、ローライズのパンツなど、うっかり下着が露出してしまう服も控えましょう。

着ている側がただのおしゃれのつもりでも、相手にとってはガードが緩いようにしか見えません。もしセクハラが露見して問題になった場合も、「煽るような格好をしていた側にも問題がある」と、言い訳に使われてしまいます。

制服の場合は、だらしなくない範囲で大き目のサイズを選ぶのもいいですね。体のラインが出なくなるだけで、大分性的な印象をおさえることができます。

報告・連絡・相談をしよう

セクハラ被害は、なかなか口に出しづらいものです。

報告するためには、「どんなシチュエーションで、何を言われて、どこをどのように触られたのか」など、詳細に話さなくてはいけません。性的犯罪の被害者が届け出を出しにくい理由も、こういった点にあります。

ですが、ただ黙っていては、誰も気づいてはくれません。業務上の報告として、感情を交えずに淡々と報告をしましょう。

セクハラ行為がなんらかの事故につながりそうな場合は、インシデント報告書として報告を上げてしまうのも、ひとつの手段です。インシデント報告書とは、ヒヤリハット報告書とも言います。

「移乗時に抱きつかれたまま離してくれず、支えきれずに落としそうになった」「物品を片付けている際に突然胸を触ってきたので、物を落としてしまった」などが例になります。自分が受けた被害ではなく、要介護者側への危険を前面に出しましょう。

また、介護職側の注意では防ぎようがない、要介護者側の身勝手な行為によるリスクだと立証できる文章を心がけましょう。もちろん、嘘の報告をあげてはいけません。

毅然とした態度を心がけよう

介護職は、サービス業です。いついかなる時も笑顔で、相手を不快にさせないように接することを、心がけていることでしょう。

セクハラを冗談でかわせる程度ならば、にこにこと人当たりよく接していても良いでしょう。ですが、その態度が、セクハラをエスカレートさせてしまう原因になるかもしれません。

セクハラをしてくる人は、セクハラする対象をしっかり選んでいます。「この人は冗談で済ませてくれる」「この人は誰にも何も言えない人だ」など、職員のことをよく観察して判断しているのです。

ですから、相手を勘違いさせないように、態度で示しておきましょう。もちろん、いくら「毅然とした態度を」と言っても、怒鳴りつけたり、叱りつけたりするわけにはいきません。

セクハラする相手は、困ったり嫌がったりする姿を見て楽しんでいるのです。ですから、そんな気持ちを挫くことができれば、それで十分です。高い声できゃんきゃん言うのではなく、むしろ静かな低い声で、冷静な一言を投下しましょう。

普段の接遇も、セクハラをしてくる人に対しては「ただの仕事としてお世話をしているだけ」という意識が伝わるよう、はっきりと一線を引きましょう。もちろん、言葉遣いや態度は丁寧にしておきましょうね。

担当を替えてもらおう

可能であれば、「セクハラをしてくる要介護者の担当は、同性の介護職に変えてもらう」などの配慮を求めましょう。

ただ触られるだけのセクハラも十分な迷惑行為ですし、病気になりかねないストレスです。ですが、ベッドの中に引きずり込まれたり、無理やりキスをされるなど、冗談では済まない事例も多々あります。

取り返しのつかない傷を負う前に、対処を求めましょう。

上司が話を聞いてくれなかったり、とるに足らないことだと聞き流されたりする場合もあります。「介護職なんだから、セクハラくらいかわせる技術を身につけろ」と言われる場合もありますね。

そういった上司の場合は、「セクハラされて自分が嫌な思いをした」ことを伝えるのではなく、「大きな事故や事件につながるリスクがある」ことを前面に出すよう心がけます。性的犯罪にまで及ぶリスクも考えられる場合は、それも伝えましょう。

退職するのも手段のひとつ

そうまでしても問題が解消できない場合や、内密に解決できないなら大ごとにはしたくないと思う場合は、退職するという選択肢もあります。

担当を替えられるほどの職員がいなかったり、上司がいつまでも問題意識を持ってくれなかったりすると、いつまでもセクハラ問題は解決できません。そうすると、否応なく苦痛な環境での仕事を続けることになります。

もちろん、ひとつの職場で長く勤められるに越したことはないでしょう。ですが、その職場での働きやすさと、自分が不快に思っている問題を天秤にかけてみてください。不快のほうが勝るのなら、そこまでして仕事を続ける意味はあるでしょうか。

介護職は、いつでも人手不足です。ひとつの職場で長く続けられなかったとしても、同じ介護職というカテゴリーの中で転職するのであれば、次の就職先に困るということはあまりありません。

思いつめて心を病んでしまうよりは、その職場を退職して、別の働きやすい職場を探すというのも、ひとつの手段です。

ストレスだらけの介護職。心と体の健康を守ろう

仕事とは、楽しいばかりのものではありません。我慢しなくてはいけないこともありますし、嫌な思いをすることもたくさんあります。

ですが、要介護者や家族からセクハラされることは、介護職の業務ではありません。

介護職の場合、セクハラの相手は要介護者や家族が主です。相手は社会的弱者であり、お客様でもあります。ケースによっては、病気や障害のせいでやっていいことと悪いことの判断ができていないために、セクハラをしている場合もあります。

それでも「セクハラ行為が許されるのか」と「セクハラ行為を許せるか」は、違います。

仕事は、生活するための手段のひとつにすぎません。セクハラによるトラウマは、時に人生を台無しにしてしまいます。あなたが「許せない」と思ったのなら、自分の心と体を守る方法を考えましょう。

「要介護者の情報は外部に漏らしてはいけない」という守秘義務があるため、要介護者とのトラブルは相談しにくいと感じる人も少なくありません。ひとりで悩まず、信頼できる相手へ相談しましょう。

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