最低賃金の法的な定められ方。対象となる賃金と除外される賃金とは

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「この地域の最低賃金が値上がりした」などと言う話や、「アルバイトの賃金が最低賃金ギリギリでキツいんだよね~」なんて声を聞いたことがあるかも知れません。

しかし、ぼんやりと最低賃金という言葉だけは知っていても、一体その最低賃金がどういうものなのか、知らない人も多いのではないでしょうか?

アルバイトの人くらいしか必要ないでしょうと思う方もいるかもしれませんが、ところがどっこい、正社員としての月給も計算してみたら最低賃金満たしてないじゃん!なんていう場合も……!?

ということで、知っていて決して損はない知識、最低賃金についてのお話を今回はしていこうと思います。

最低賃金の概要。最低賃金法ってどういう考え?

最低賃金とは、「賃金の最低額を保障」することによって労働者を保護するための決まりです。

ようは、これ以上の額を労働者に支払ってくださいね!という絶対的な決まりです。

一部の例外(※後述します)を除き、労働基準法上の労働者(=家事使用人や同居の親族のみの事業以外の労働者)はすべてこの最低賃金が適用されます。

その最低賃金額は例外なく「時間のみ」で定められています。

時間による最低賃金の定め

上の絵のような厚生労働省のポスターなどに「この地域の最低賃金額は時間給●●円です」と書かれていますが、「日給●●円です」などという記載はないですよね。

先程も述べた通り絶対的な決まりですから、雇い主が「君の時給は700円ね」と言っても、その地域の最低賃金が800円だった場合、その時給は無効となって時給800円が適用されるようになります。

しかし、いざ概要がわかったところでふと疑問が。

基本給は勿論最低賃金という考えに含まれるとして、例えば交通費や残業代などは含まれるのでしょうか?

それによっては、賃金の計算が大きく変わることになります。

ということで、お次はどんな手当が最低賃金の計算に含まれるのか、はたまた含まれないのかを見ていくことにしましょう。

最低賃金の計算に含まれる賃金、含まれない賃金

さて、最低賃金を計算する時に一体何が含まれるのかというお話です。

まずは計算に参入する方、含まれる賃金から。

含まれる賃金

  • 基本給
  • 諸手当のうち、精皆勤手当・通勤手当・家族手当を除く全ての手当

以上が最低賃金の計算をする時に含まれる賃金です。

所謂、所定内賃金の殆どが含まれることになります。

ということは……もしかしたら既に含まれない賃金の予想が出来た人もいるかもしれませんね。

計算に含まれない賃金は以下の通りです。

含まれない賃金

  • 諸手当のうち、精皆勤手当・通勤手当・家族手当
  • 時間外割増賃金
  • 休日出勤手当
  • 深夜割増賃金
  • 1月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  • 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)

恐らくほとんどの方の予想通り、先程のところで除かれていた精皆勤手当・通勤手当・家族手当は計算に含まれないものでした。

考えてみると確かに、毎月の通勤費も時給○○円~の中に含まれていることなんてありませんからね。

そして、計算に含まれるのが所定内賃金に対して、所定外賃金と呼ばれる方はすべて計算に参入されません。

また、賞与(=ボーナス)や結婚手当のような恩給的なものも計算には含まれないことになっています。

ということを図にまとめると、こうなります。

加算される賃金と除外される賃金

これだけではちょっとピンとこない……という方も多いと思います。

それでは、実際に具体例を挙げて、どういう風に最低賃金を算出するのかも見ていくことにしましょう。

計算の具体例

時給制でしたらそのまま時給○○円、が最低賃金に違反しているかいないかを見れば良いのですが、月給○○円の場合はそうはいきません。

月にもらうすべての賃金の内、固定給の方から計算に含まれない精皆勤手当・通勤手当・家族手当を引いてから、その額を月の平均労働時間で割った金額が1時間に支払われる自分の賃金額になります。

月の平均労働時間は就業規則で定められている場合はそれを使えば良いですが、そうではない場合は自分で月何時間働いているかを算出しましょう。

これから例を挙げる二人は、どちらも月給制の労働者で、就業規則で月の平均労働時間が「160時間」と定められています。

そして、この地域の最低賃金額は、「950円」と定められているとします。

・Aさんの場合

最低賃金額の算出Aさんの場合

Aさんは画像の通り、基本給が15万円、諸々の諸手当を併せて計18万円が月のお給料として支払われています。

この内、計算に含まれないとされている、

  • 通勤手当…5,000円
  • 家族手当…10,000円

の計15,000円をここから引きます。

180,000-15,000=165,000円

この165,000円を月の平均労働時間である160時間で割ると、

165,000÷160=1031.25円

となり、時間給にして1031円支払われていることになるので、最低賃金法には違反していない、ということになるわけですね。

・Bさんの場合

最低賃金額の算出Bさんの場合

お次はBさん。

こちらも、月に支払われている金額は18万円とAさんと変わらない金額ですが、よくよく見ると内訳が違いますね。

基本給が14万円、職務手当に5,000円。

ここまでが計算に含まれる賃金です。

計算に含まれない、

  • 精勤手当…5,000円
  • 通勤手当…10,000円
  • 家族手当…20,000円

計35,000円を月給から引くと、

180,000-35,000=145,000

145,000円になります。ここから更に160時間で割ると、

145,000÷160=906.25

となり、なんと、950円を下回る結果になってしまいました。

この場合、最低賃金法に違反している、ということになります。

同じ月給でも、内容によってこれだけの差が出てしまうんですね……。

「これだけ払われている(支払っている)から大丈夫だろう」という認識で、実際払われてないパターンも大いにあると思うので、注意が必要です。

知って得する最低賃金豆知識

さて、今まではどういう賃金が含まれるのか、計算するとどういった場合に最低賃金を下回るというのか、具体例を交えて見てきました。

少しは理解が進んで、自分の賃金も計算しやすくなったのでは?

続いては、最低賃金に関する、ちょっと賢くなれる豆知識をご紹介していきます。

豆知識と言っても、結構知っていると役立つ知識ばかりですよ!

特定最低賃金と地域別最低賃金

先程の具体例など、今まで話してきた中で基準にしている最低賃金というのはどれも「地域別最低賃金」というものでした。

地域別最低賃金というのは、都道府県のそれぞれで決められている最低賃金のことで、つまり全国に47件最低賃金が定められているということになります。

因みに、この金額の決定に関しては、「生活保護法」で生活保護費を受給している人よりも働いている人の方がきちんと稼げるように配慮して定められているようです。

最近はワーキングプアなどの話題もよく耳にする社会ですからね。

と、脱線しそうなので戻すとして……地域別最低賃金、これともう一つ、最低賃金には種類があることをご存知でしたか?

それが、「特定最低賃金」というものです。

別名、「産業別最低賃金」とも呼ばれます。

特定最低賃金は特定の地域にある産業について、地域別のものとは別の水準を設定しているんです。

大抵は地域別よりも水準を高く設定していますが、時には商品小売業など、地域別の方が高くなる例もあります。

また、基本的には労働者が地域別と産業別、二つの最低賃金両方の適用を受ける場合は、「より高い方」をその人の賃金にしますが、そういった小売業などの方は、低いほうが適用になる場合もあったりします。

詳しくは厚生労働省HP、『特定最低賃金の全国一覧』に一覧が載っていますので、ご興味のある方は覗いてみてくださいね。

最低賃金法を破ると罰金刑!?

どの法律にも罰則というものはつきものですが、当然最低賃金法にも存在します。

禁錮や勾留、様々な刑があるかと思いますが、この法律では罰金刑が課されます。

主なものは以下の二つです。

  • 周知義務を怠った場合

最低賃金の適用を受ける使用者は、当該最低賃金の概要を常時作業上の見やすい場所に掲示しなければなりません。

もしくは、掲示できない場合は、労働者に何らかの方法で周知する義務があります。

周知義務を怠った場合

これを破ると30万円以下の罰金が課せられます。

因みに、この周知というのは、紙で概要を交付する必要はないです。

飽くまで、口頭や掲示物などで最低賃金というものの周知がされていれば大丈夫、という義務なんですね。
  • 最低賃金を支払わない場合

続いては当たり前だ!と思われる方が殆どだと思いますが、最低賃金よりも低い賃金で労働者を使用した場合には罰金が課せられます。

最低賃金を支払わない場合

こちらの場合は、先程よりも高く、50万円以下の罰金刑です。

ただし、特定最低賃金を下回った額を支払った場合は罰金刑の適用はなく、飽くまで地域別最低賃金を下回る額の場合のみ違反になるそうです。

最低賃金適用の例外

最低賃金よりも低い金額を支払った場合は違反!と言ったばかりですが、実はこの最低賃金、例外があるんです。

一番最初に一部の例外、ということをちらっと言いましたが、遂にここでお話します。

例外に当てはまる人を雇う場合、都道府県労働局長に書類を提出して許可を受けることが出来ると、最低賃金額よりも更に減額して賃金を支払うことが可能になるんです。

最低賃金の適用を受けない人は、以下の5種類です。

  • 精神または身体の障害により著しく労働能力が低い者
  • 試の試用期間中の者
  • 職業能力開発促進法24条第1項の認定を受けて行われる職業訓練の内、職業に必要な基礎的な技能及びこれに関する知識を習得させることを内容とするものを受ける者
  • 軽易な業務に従事する者
  • 断続的労働に従事する者

いまいちどういうものか分からない!ピンとこない!

という方が多いかと思いますので……(特に3番目!)詳しく順に見ていきましょう。

  • 精神または身体の障害により著しく労働能力が低い者

精神または身体の障害により著しく労働能力が低い者

これは読んで字の通り、一定の精神、または身体の障害で他の労働者の方よりも“著しく”労働効率が低い場合に適用されるものです。

絵のパターンのように、車椅子だから、障害があるから、といって必ずしも例外になるわけではなく、あまりにも他の労働者と比べて業務に支障が出ていると分かる場合のみ適用されます。

減額率は、比較になる他の労働者を100として、それと比べてどれくらい差があるかで減額の上限を決め、そこから更に経験や能力などを見て勘案していきます。

100に比べて70程度だな、と思った場合は30.0%の減額率が上限になり、そこから色々なことを鑑みて最終的な減額率は15.0%、はたまた25.0%、などと言う風に出来るというわけですね。(※以下すべてのパターンで小数点第1位以下は切り捨てです)

  • 試の使用期間中の者

試の使用期間中の者

こちらは所謂試用期間中の人のことです。

ただ試用期間というだけで適用されることはなく、許可申請をするその業種・職種の、試用期間後の本採用時の給与が最低賃金額程度の水準であることや、慣行として試用期間の人を著しく低い賃金にするなどといった、合理的な理由があることが必要です。

減額率の上限は一律20%に定められています。

ここから、労働者自身の経験や能力、成果を勘案して最終的な減額率を定めることになります。

  • 職業能力開発促進法24条第1項の認定を受けて行われる職業訓練の内、職業に必要な基礎的な技能及びこれに関する知識を習得させることを内容とするものを受ける者

認定職業訓練を受ける人に

これは簡単に言うと、企業などが行う認定職業訓練を受ける人に対して適用されるものです。

その中でも、

  1. 普通課程の職業訓練
  2. 短期過程の普通職業訓練
  3. 専門過程の硬度職業訓練

を受ける人に限られます。

訓練中の人はまだ労働の能力が未熟である、と判断されるため、労働結果に必ずしも結びつかないとして許可を受けられる場合があるんですね。

ただし、訓練期間が1年以内の人に限られ、2年~3年以上の訓練期間のある人には適用されません。

更に、一日の2/3以上を生産活動(つまり訓練ではなく通常業務)に当てる労働者の場合は、同様に適用されないことになっています。

減額率は、その人の一日の平均労働時間を、一日の平均訓練時間から除して得た率が上限です。

つまり、例えば一日の平均労働時間が7時間、平均訓練時間が3時間とすると、

3時間÷7時間×100=42.85%

なので、上限は42.8%ということになります。

上の2パターンと同じく、この上限から労働者自身の経験や能力、成果を勘案して最終的な減額率を定めていきます。

  • 軽易な業務に従事する者

軽易な業務に従事する者

お次は軽易な業務のパターン。

軽易な業務とはなんぞや?と思われる方も多いと思いますが、例えば業務の進行や能率にノルマがないような、書類の整理・片付けであったり、清掃の業務がそれに当たります。

また、その業務に従事する人が事業場内に殆ど居ない例外的なものである必要もあります。

監視業務もこの軽易な業務に当たる可能性もありますが、「常態として身体または精神の緊張が少ない」場合に限られるので、例えば(そういう職場があるのかはわかりませんが)監視をしながらお菓子を食べたりスマホを弄っていてもOK!みたいな場合は該当するでしょう。

いずれにせよ、その事業場で最低賃金の適用を受ける人よりもかなり軽易な業務に就いている場合のみ適用があるようです。

減額率の上限は、比較となる異なる業務に就いている同事業場の労働者を100とした時に、どれだけ軽易かで決めていきます。

例えばその軽易な業務が別の業務と比べて75程度のレベルだな、という場合は上限は25%になります。

あとは他のパターンと同様に、個々人で明確な減額率を細かく定めていくことが必要です。

  • 断続的労働に従事する者

断続的労働に従事する者

断続的労働に従事する者とは、例えば住み込みの管理人のようにある程度手待ち時間が多い人のことを指します。

実労働時間よりも、手待ち時間が多い場合のみ、適用される可能性があります。

減額率の上限は、まず所定労働時間を実労働時間と手待ち時間に分けます。

その特定した手待ち時間に100分の40をかけて得た時間に、所定労働時間を除した率が上限になります。

例を挙げると、所定労働時間を10時間、その内実労働時間は4時間、つまり手待ち時間は6時間だったとします。

6時間×100分の40÷10時間×100=24%

ということで、上限は24%になります。

そこから労働者によって実際に適用する減額率を変えていく、というわけですね。

この5つのパターン、なかなかお目に掛かる機会はないかも知れませんが、頭の片隅にでも知識を入れておくといざという時に使えるかもしれませんよ!

派遣社員の最低賃金は派遣先?派遣元?

最後の豆知識。さて、派遣社員の人が派遣元とは違う都道府県に派遣された場合、派遣元と派遣先、どっちの最低賃金額が適用されるでしょうか?

最低賃金の派遣元、派遣先

答えは……派遣先です。

「実際に派遣社員が働いているところの」最低賃金という風に考えると、分かりやすいのではないでしょうか。

なお、派遣先で同種の労働者が特定最低賃金の適用を受けている場合は、その派遣社員にも特定最低賃金の額以上を支払うように法律で定められています。

一度計算してみると理解も深まるかも

というわけで、最低賃金について今回は触れてみましたが、いかがだったでしょうか?

一度自分の賃金についても、最低賃金額以上を満たしているかどうか(勿論普通は最低賃金額以上を支払われていると思いますが……!)、計算してみると良いかも知れませんね。

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