mizuiro株式会社が「おやさいクレヨン」で描く未来とは。木村尚子代表インタビュー

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この記事のご協力者様

木村 尚子 代表取締役

mizuiro株式会社

最近はエシカル商品が徐々に注目されるようになってきました。mizuiro株式会社が販売している「おやさいクレヨン」もそのひとつです。

メディアでたびたび紹介されるおやさいクレヨンは、お米や野菜由来の人と環境にやさしいクレヨン。一般的なクレヨンにはない色合い、安心安全さが魅力です。

野菜でクレヨンを作るというアイデアは、どのようにして生まれたのででしょうか。「mizuiro株式会社」木村尚子代表取締役にインタビューしました。

「おやさいクレヨン」とmizuiro株式会社が誕生するまで。木村尚子代表インタビュー

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2012年には、仕事と子育ての両立のために、自宅の机一つでフリーランスデザイナーとして開業されたということですが、そこから「おやさいクレヨン」の原案が浮かばれたきっかけ、そして起業をされた経緯などをお伺いしてまいります。

木村代表、どうぞよろしくお願いいたします。

よろしくお願いいたします。

妊娠出産でわかった2つの問題

私は高校卒業後、デザイン系ソフトの技術を地元である青森市の専門学校で習得し、そのまま青森市の広告代理店に入社、編集部で雑誌編集や広告デザインなどを担っていました。

その環境でデザインの経験を積みながら、24歳で結婚。妊娠がわかってから妊娠9ヶ月ごろまで働いていました。

育児休暇の取得をし産前産後に合計4ヶ月のお休みを経て、職場復帰しました。

しかし、職場復帰してからが大変でした。急な残業に追われたり、保育園のお迎えや毎日のご飯の準備、お洗濯などの家事がどんどんたまってしまって‥「仕事と子育ての両立」の難しさ、という問題をありありと感じました。

結局、一般事務のお仕事に転職しました。定時帰宅ができて、生活は安定しました。

でも、そこで2つ目の問題に気付いたのです。

「自分の好きな事への情熱を持て余してしまう」という、自分の気持ちです。

やはり、デザインのお仕事に携わっていたいという思いがあったのです。こんな毎日でいいの?と悶々とする日々で、辛かったですね。

独立開業から法人化へ

そこで、だったらもう思い切って独立して、ワークライフバランスを自分らしく構築してみよう!と決心しました。

こうして2012年の秋、フリーランスデザイナーとして独立開業いたしました。

自宅アパートで、机1つ、Mac1台での営業開始でした。

自宅で仕事することの最も良い点は、家庭のペースに合わせて、自分のペースで仕事ができるようになったことでした。まさに、私の求めていたワークライフバランスの実現でした。

少ししたころに心にも余裕がうまれてきて、「新しいことにチャレンジしたい」という欲求がふつふつと湧いてきました。

そこで、思いついたのが「おやさいクレヨン」です。

この事業が様々な周りの方の支えもあって成功し、独立開業から約2年後である2014年9月に「mizuiro株式会社」を設立いたしました。

「おやさいクレヨン」誕生まで

青森は”野菜の宝庫”です。この地元の魅力を知っていたからこそ、青森県の新しいアピールのかたちとして、野菜色のインクや描画材をつくって全国に広めたいと感じました。

そして、すぐに6次産業化支援の窓口を訪ねました。

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天然色の文具プロダクト、開発を決意された瞬間ですね。行動までも、やはりお早い!

そこからいっきにクレヨン市場の調査を進めました。既存の自然派メーカー品から学び、大手メーカー品が手を出さないであろうニッチな領域である商品を目指し、コンセプトを「野菜食の世界観を伝え、安心・安全の日本製にこだわる。」というものに決めました。

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非常にスムーズな展開ですね。ご苦労されたタイミングはあったのでしょうか。

製品の完成までは、試行錯誤の連続でしたね。

まずは「クレヨンってどう作るのだろう?」というところから、一般的なクレヨンの製造法をインターネットや書籍を見て学びました。

ありがたいことに情報は多くあったので、すぐに開発チームで試作を開始しました。

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手作りクレヨンのレシピは、

  1. 蝋を溶かす
  2. 顔料を入れる
  3. 成型器に流す
  4. 冷やし固める

の工程が一般的ですね。

そうなのです。そこで私たちはまず、市販の蝋に野菜を細かく刻んで乾燥させたものを混ぜ、型に入れて固めました。一応、クレヨンらしきものは完成したのですが、着色が悪く、退色が早く‥うまくいかなかったのです。

そこで日本絵具クレヨン工業協同組合のウェブサイトから、小ロットでOEM生産を受けてくれる企業をリサーチし、半主導製造で手作りのぬくもりを感じられた東一文具工業所さんにお願いすることにしました。

ターゲットは20~30代の子育て世代に設定、”自分の子どもに使わせたいと思えるクレヨン”を目指し、とにかく成分にはこだわりました。

まずクレヨンに混ぜ込む野菜は青森県産にこだわり、地元の商品加工会社のご協力を得て、こちらの野菜粉末を採用。クレヨンに使用されているワックスも、当社オリジナルである、料理用の「ライスワックス(米油)」を採用しました。

野菜の粉末 + ライスワックス + 食品添加物用顔料 の3つのみで構成された「安心・安全」な製品です。

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クレヨンに使用される野菜の粉末も、廃棄になるものをリサイクルされたものだそうですね。エコロジーでもある「おやさいクレヨン」、素晴らしいです!

世界へ広がる「おやさいクレヨン」

製品が完成した後は、販路の開拓に奔走しました。

最初は東京インターナショナル・ギフト・ショーに出展し、多くのブースに来てくださったバイヤーの方との商談、併せてマスコミの取材を受けました。

開催3日間のうちで当初予想していた数の5倍、7倍というブース来場者数を記録、また多くのメディアから取材依頼が殺到し、まさかの大反響をいただきました。

最初は趣味の延長で考えたこの企画が、こんな風に称賛される新事業へつながるとは‥と嬉しかったですね。

そして全国へ、海外へと販路を広げることができました。

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法人化される前の2014年の2月には、フランクフルトのアンビエンテに海外初出展されたのですよね。青森県の魅力がクレヨンというかたちになって世界に伝わるだなんて、本当に素敵です。

起業して感じた喜び、見えた新たな世界

起業することは正直、楽しい側面だけではないです。苦労もありました。

でも、私が起業してから得たすべての経験はどれも、何一つ無駄なものはありませんでした。

そして、「好き」を仕事にして働ける喜びを強く実感できます。

やりがい、自由度、楽しさを通じて、新たな世界に出会い、夢を見ることができるのです。

すべての女性にお伝えしたい。たった一度の人生です。一歩踏み出して、女性ならではのアイディアで、イキイキと働き、そして生きましょう。

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一歩踏み出すことで得られる経験、知識、そして人との出会いはすべて、新しい自分との出会いにつながりますね。

仕事と子育ての両立の難しさと、自分の好きな事を仕事にしたいという強い思いから独立、起業された木村代表だからこそのヒストリーと熱い思いを伺えて嬉しいです。

木村代表、本日は大変ありがとうございました!

mizuiro株式会社とおやさいクレヨンシリーズのご紹介

今回のインタビューにご協力いただいた木村尚子代表が運営する「mizuiro株式会社」について紹介いたします。

青森県青森市に本拠を置くmizuiro株式会社は、自社製品の商品企画販売、デザイン受託事業をおこなっている会社です。

木村代表は、育児と仕事を両立するため2012年9月からフリーランスデザイナーとして自宅でお仕事をしていました。

そして、開発したおやさいクレヨンの販路拡大に伴い、2014年9月に法人化。mizuiro株式会社として「親子の時間をデザイン」を主軸に事業をスタートさせました。

同年に東京で開催される大規模な展示会に初出展したところ、おやさいクレヨンが大反響を呼び、あっという間に全国で販売されることが決まりました。

青森生まれのおやさいクレヨンは、シリーズ化して5年間で累計約12万セットを出荷する大ヒット商品に。mizuiroは数々の賞も受賞し、海外バイヤーからの注目も集めています。

「おやさいクレヨン」とは


おやさいクレヨンは、野菜パウダー、ライスワックス、食品添加物用の顔料のみで作られた安心安全で環境にやさしいクレヨンです。

一般的なクレヨンと異なり石油ワックスを使っていないので、においが気にならず、子どもが舐めても安心。特有の透明感のある色合いが楽しめます。大人より体温が高い子供が握ってもべたついたり折れたりしないよう、原料を黄金比率で配合して作っています。

おやさいクレヨンが誕生するまで
おやさいクレヨン誕生のきっかけは、木村代表の「もしも野菜色のインクや描画材があれば、野菜の宝庫である青森県の魅力が全国に発信できるかも」というひらめきから。

2013年7月から「野菜色の世界感」「安心・安全」「日本製へのこだわり」をコンセプトにしたおやさいクレヨンの試作が始まりました。

木村代表は、幼稚園や保育園へ安全なクレヨンを提供している老舗クレヨン工房「東一文具工業所(名古屋市)」に試作を依頼。

野菜粉末を使ったクレヨンは固めることが難しいため、試行錯誤を繰り返していたのですが、職人の丁寧な手作りによって、なめらかな書き味のクレヨンが作れるようになりました。

さらに青森県産の材料にこだわり、県産の食用野菜粉末を探したところ、野菜の生産から加工までを一貫しておこなっている地元の商品加工会社との出会いがありました。

地元の商品加工会社の全面的な協力を得て、野菜パウダーの試作に取り掛かりますが、木村代表は、食べられるのに規格外で売ることができない農産物、加工品から出る”残さ”が大量に廃棄されていることに気づきます。

農産物の「もったいない」現状を学んだ木村代表は、できる限り廃棄される野菜や加工品から出る残さを使ってクレヨンを作ることにしました。

おやさいクレヨンは、1本ずつ丁寧に手作り・梱包され、全国に発送されます。環境にも配慮し、自社製品パッケージは脱プラスチックの取り組みもおこなっています。

2014年に誕生してから、季節ごとに野菜の種類を変え、内容色の異なるseason1~4のセットをリリース、色のバリエーションも豊かになりました。

こだわりは「地球上で循環可能な素材で安心安全な製品を開発すること」
mizuiroのこだわりは「地球上で循環可能な素材で安心安全な製品を開発すること」です。

青森県はりんご、カシス、キャベツ、にんじん、長いもの産地です。そこで、りんごやカシスを加工するときに出る残さ、キャベツの外葉や長いもの皮などをクレヨン用の粉末として使うことにしました。

ライスワックスの原料である米ぬかも、また大量に処分される食品廃棄物のひとつです。

食品からつくられるおやさいクレヨンは安心・安全であることにくわえ、米ぬか、野菜・果物をリサイクル・リユースすることが、食べられる食品を廃棄する「食品ロス」問題解消にも貢献しているのです。

mizuiro株式会社の製品

mizuiroは「おやさいクレヨン」をはじめ、安心安全な素材にこだわった製品を販売しています。

欧州の玩具整合規格 「EN71-3:2013」認証も取得しており、子どもの玩具としての安全さは保証済みです。

おやさいクレヨン
原材料の8割に森県産の農産物が使われているクレヨンです。
全10色(きゃべつ、ねぎ、ながいも、ごぼう、とうもろこし、ゆきにんじん、りんご、カシス、むらさきいも、たけすみ)

天然の野菜を使用しているため、種類によっては、ほんのり野菜の香りがする色もあります。たとえば「ねぎ」は、色を塗った時に香りがわかりやすいそうです。

おこめのクレヨン
ライスワックスと安全な無機顔料・有機顔料で作った全16色のクレヨン。発色が鮮やかです。

おはなのクレヨン
蜜蝋ワックスとお花のパウダーでつくった植物性のクレヨンです。
全5色(バタフライピー、ヘナ、バラ、ローズヒップ、ハイビスカス)

おやさいねんど
コーンスターチ、トマト、たけすみ、緑茶、コーヒーでつくった、小さな子どもも安心して遊べる5色入りの粘土です。

あわせて、クレヨンで色を塗る「ぬりえノート」「ぬりえノートあおもり」「ぬりえちよがみ」を利用すると、さらに楽しく遊ぶことができます。

また「紙製トランクセット」や、青森県産すぎで職人が手作りした「ウッドトランクセット」はギフトにも最適です。

製品はmizuiroのオンラインショップから購入できます。

また、mizuiroは、既存製品を活用した他社ブランドの受託事業(OEM)や共同商品開発、ノベルティ製作もおこなっています。

OEM製品
  • アドベンチャーワールド版 どうぶつうんちねんど(アドベンチャーワールド)
  • マイキーのおこめのクレヨン(株式会社トンカチ)
共同開発商品
  • おこめのクレヨン 日本の伝統色(ターナー色彩株式会社)
  • ART-ZOO おやさいクレヨン(ART-ZOO)
  • 海と日本PROJECT おやさいクレヨン(株式会社青森テレビ)
  • NIKI Natural Crayon(株式会社DACホールディングス)

2020年2月からは、新製品「彩るスパイス時間CRAYONS」のクラウドファンディングを開始しています。こちらは、ハウス食品グループ本社のスパイスの残さを利用した、スパイスの香りがする大人向けのクレヨンです。

SDGsの取り組み

mizuiroはSDGsにも取り組み、エシカル消費普及に一役を買っています。

SDGs(持続可能な開発目標)」とは、2015年9月の国連サミットで採択された「2030年までに持続可能で、より良い世界を目指すための国際目標」のこと。日本での認知度は低いのですが、世界が一丸になって取り組んでいる目標です。

SDGsには17の目標が掲げられ、その内容は「飢餓や貧困をなくそう」「気候変動に具体的な対策を」など、いま世界が抱える問題を包括するものとなっています。

mizuiroは、その17の目標のうち「つくる責任 つかう責任」「 働きがいも経済成長も」「ジェンダー平等を実現しよう」「質の高い教育をみんなに」の実践に向け、ライフスタイルやデザインの提案をおこなっています。

目標12:つくる責任 つかう責任
自然資源を大切にするmizuiroの企業活動は、目標12のテーマ「持続可能な生産消費形態を確保する」ことにつながっています。
目標8:働きがいも経済成長も
mizuiroは、パッケージの組み立ての一部を青森市の障害者NPO団体へ委託し、目標8のテーマである「働きがいのあるディーセント・ワークの促進」に貢献しています。
目標5:ジェンダー平等を実現しよう
mizuiroでは、子育て中のママさんたちが丁寧に梱包・商品化しています。女性が家計と両立をはかりながら活躍し、男女とも平等に機会が与えられる社会づくりに貢献します。
目標4:質の高い教育をみんなに
目標4のテーマ「質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」に基づき、売上金の寄付、青森県内の幼稚園・保育園へのクレヨン寄贈、クレヨン画展など、青少年の未来に向けた社会貢献活動を積極的におこなっています。

親子の時間を彩り人と環境にもやさしい、おやさいクレヨン

お子さんとの時間を大切にするため会社員からフリーランスへ、そこから「自分の好きなことを仕事にする」という夢を叶えオーナーになった木村尚子代表のお話をうかがいました。

苦労もあるけれど、自分の好きなことができるところが何よりの喜びで、大きなやりがいがあるから続けられるとのこと。育児と両立しながら仕事を通して新しい世界に挑戦しておられ、とても素敵だと思いました。

おやさいクレヨンは、親子の時間をデザインする文具であると同時に、sDGSに沿った事業展開で社会にも貢献しているエシカルな商品です。

今後もより多くの方に、おやさいクレヨンの彩りを楽しみながら、地域の魅力、食品廃棄の問題について知っていただけると嬉しいと思います。

この記事のご協力者様

木村 尚子 代表取締役

mizuiro株式会社

1979年青森県青森市生まれ。県内のデザイン系専門学校卒業後に地元広告代理店へ入社。編集・デザイン業務に長く従事し、2012年にフリーランスデザイナーとして自宅にて開業。主にグラフィックデザインを中心に手掛けていたが、「自分だけの商品を生み出したい」、なおかつ「青森らしいプロダクトを作りたい」、そんな想いを抱きプロダクトデザインに着手。そんなある日、藍染展にて自然由来の色に感銘を受けたことから「おやさいクレヨン」のアイディアが湧く。 2013年7月から「おやさいクレヨン」開発をスタート。小さな事務所の一室にてクレヨンの試作が開始。わずか9ヶ月のスピード開発で、翌2014年3月には発売。予想以上の反響を各方面から得て本格的に事業化。同年9月mizuiro株式会社を設立。野菜にはない色である水色、そして何よりも好きな空と海の色。彩りから生まれたからこそ名付けられた。地域に眠る無数の資源や、未利用資源をどう活用するかを常に考え、再利用を目的とした製品企画、商品デザインを目指す。人と自然、動物に優しい製品づくりと、親子の時間を彩るライフスタイルの新提案を展開する。

(本記事の情報は2020年3月時点のものです)

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