就職を考えた方がまず書かなくてはいけないのが、履歴書ですね。そこには必ず、志望動機の欄があります。面接の際にも、志望動機を聞かれることは避けられません。

考えてはいるはずですが、改めて言葉にするとなると、意外と難しいものですよね。

介護職を志す方が、どのような志望動機を持っているのか。普段なかなか聞くことができない、介護職の志望動機についていくつかの例をご紹介します。

介護職を志望する動機は、業種によって変わる

ひとくちに「介護職」と言っても、その業種によって、勤務形態も仕事内容も大きく変わります。当然、志望動機もそれに応じて変わります。

履歴書に志望動機を記入するときは、なぜその業種を志望したのかを考えると整理しやすくなります。業種ごとの特徴を見ながら、自分の志望動機を振り返ってみましょう。

入所施設への就職を考える

入所施設の特徴は、施設に入所して一日を過ごす方のお世話をするという点です。入所している方の生活全般のお世話をするので、仕事内容も多岐にわたります。

通常の日勤業務の他に、夜勤や早番、遅番などの勤務形態があり、多くの場合はシフト制になるでしょう。必然的に、生活が不規則になります。

入所施設で介護職をするメリットは、他の職員と連携して仕事をするという点です。介護職もひとりということはまずないので、先輩に仕事を教えてもらったり、同僚に相談したりすることができます。

入所される方は、そこの施設で一生を終えられることも珍しくありません。介護度が重い方も多く、ケアの方法や知識もさまざまなものが必要になります。医療的な知識が必要になるケースも多いでしょう。

入浴や排泄の介助など、身体介護の比重が重い職場でもあります。介護職としての観察眼や専門的なスキルを身につけやすいと言えるでしょう。

施設入所系への就職では、このあたりをメリットにとらえて志望動機にされる方が多いですね。

通所施設への就職を考える

デイサービスやデイケアなど、通所系の施設を志望される方もいるでしょう。

通所型の施設の特徴のひとつに、夜勤がないことがあげられます。営業時間が決まっているので、勤務時間が大きく変化することはありません。

デイサービスを利用する方は、車で移動して来所します。ですから、デイサービスを利用される方では寝たきりの方は少なく、イスや車イスに座っていられる方が多くなりますね。

日中をデイサービスで過ごし、入浴や食事、レクリエーションをするのが、一般的なデイサービスです。最近では、認知症専門のデイサービスや、半日だけ来所してリハビリをおこなうタイプのデイサービスなど、バリエーションが増えています。

デイサービスでも、一人だけで勤務するということは、まずありません。移動や食事、排泄、入浴、レクリエーションなど、他のスタッフの動きを学びながら働くことができます。

人との交流や、活動を楽しみに来られている方が多いので、積極的に楽しく人と関われる方にお勧めの職場です。工作や裁縫などの手作業や、音楽活動など、ご自身の趣味を生かすこともできます。

デイサービスに就職したい方は、このあたりの特徴に注目される方が多いです。

ただ、多くの場合は送迎が仕事内容に加わるので、車の運転が苦手な方は、応募の際にご相談したほうがいいかもしれません。利用される方のご自宅へ迎えに行くので、細い道や悪路を運転する必要に迫られる場合もあります。

訪問系への就職を考える

ご利用される方のご自宅に伺うので、施設入所やデイサービスの場合と異なり、特別な機械や設備を使うということもありません。他人の家に入るという緊張感はありますが、ごく一般的な家事ができれば、心配はないでしょう。

訪問介護でのお仕事は、多くの場合、単独行動です。その分、他のスタッフに気兼ねをすることなく活動できるという利点があります。施設やデイサービスと違って、ひとりの利用者だけに集中して対応ができるのも特徴です。

訪問介護では、このあたりの特徴を志望動機にされる方が多いですね。

気を付けておきたいのは、他のスタッフから仕事を学べる機会が、とても少ないということ。職場によっては研修を設けている場合もありますが、仕事以外に時間がとられてしまうというデメリットがあります。

介護職の志望動機で多い例。どんな理由が採用側にささる？

その業種を志した理由については、まとめられたでしょうか。では次に、あなたが介護職を志した理由について考えてみましょう。

面接官は人間ですから、ちょっといじわるなことを訊かれたり、あなたの気持ちを聞き出そうと工夫してきたりすることがあります。「履歴書に書いてあることをそのまま話せばいい」というわけにはいかないのです。

あなたが自分の志望動機を考えるための参考に、介護職を希望される方がよく述べられる志望動機を、いくつかあげてみましょう。

介護職へのあこがれがあるから

「自分の身内が介護職のお世話になった経験があり、自分も人の助けになる仕事がしたいと思った」というケースですね。ボランティアなどで介護の現場を見て、「自分も人の役に立ちたいと思った」という場合もあります。

実際の介護職を見て「自分もああいう風な仕事がしたいと思った」という、誰が聞いてもわかりやすい志望動機です。

介護職は看護職よりも命にかかわる仕事をすることは少なく、代わりに生活を支えるイメージが強いものです。その人の人生を和やかで豊かなものにするための支援をする介護職には、優しい心の持ち主というイメージがつきものなのでしょう。

志望動機としては、もっとも美しいものかもしれませんね。

介護職のやりがい・魅力の記事も参考にしてみてください。

自分の両親を介護するときのため

人間には家族や血縁がいますから、誰しもいずれは介護にかかわることになるでしょう。

排泄や入浴、食事の介助はもちろんのこと、移動の付き添いをするだけでも、介護経験者と未経験者には雲泥の差があります。いつか来る家族の介護のときのため、実用性を兼ねた仕事に就きたいと思うのは、悪い考えではありません。

実際にお世話をすることはなくても、利用できる制度や事業などを知っておくことで、家族に介護が必要になった時に役立てることができます。

「仕事で得た経験を、自分の家族に還元したい」という、実用的で説得力のある動機です。

割と現実的な理由なので夢はないかもしれませんが、その分だけ、しっかりした人生設計ができている印象を受けます。

求人が豊富にある資格職だから

高齢化率が留まることを知らない日本では、高齢者介護の求人は、まだしばらく需要のほうが上回るでしょう。離職率が高いこともあり、どこの職場でも売り手市場な状況となっています。

その分だけ、中途採用や、未経験者の採用、中年層の採用などが、一般職よりも多くされている現状があります。基礎資格さえあれば、まず、「就職できない」なんてことはないでしょう。

職にあぶれる心配がないという点では間違いないので、これも説得力がある志望動機です。

新卒でも就職が厳しかったり、リストラなどで終身雇用が難しかったりする現代だからこそ、こういった現実的な志望動機には思わず納得してしまいますよね。

経験年数に応じてステップアップできる

介護職に就くための基礎資格は、お金を出して研修を受けさえすれば、簡単に取得することができます。ですが、介護職というのは、経験を重ねることで取得できる上位資格があるのです。介護福祉士やケアマネジャーなどは、一般的にも有名ですよね。

上位資格を取得することで、責任のある立場を任されるようになったり、介護の現場だけではなく新人教育にもあたるようになったりと、仕事内容も変わっていきます。

ケアマネジャーの資格を取得すれば、介護の現場を離れ、支援専門員や相談員として業務に就くこともあり得ます。

介護の仕事を続けていく意欲もアピールもでき、向上心が感じられる志望動機です。

ただ、職場によっては、介護福祉士はともかくケアマネジャーの資格を取得することは歓迎されない場合もあります。ケアマネジャーを取得すると、介護職の現場を離れて転職してしまう方が多いからです。この点は気を付けておきましょう。

新しい一歩は、勇気を持って踏み出そう

勤務時間は、常勤や非常勤など、就職したときの条件によっても変わります。

施設勤務では特に、夜勤専門や、日中だけの雇用もある場合があります。施設によっては、入浴介助だけ、お掃除だけなど、限られた仕事をするスタッフを募集していることもあります。

施設勤務で常勤の場合は、遅番・早番・夜勤などのシフトに対応することになるでしょう。介護だけでなく、レクリエーションや季節行事、外出支援など、さまざまな仕事を割り振られることもあります。

通所介護でも、非常勤の方は午前中のみや午後のみ、送迎だけの勤務など、さまざまな就業形態があります。常勤の方にはさまざまな仕事を求められる傾向がありますね。デイサービスで取り組む工作の用意なども、仕事のうちです。

介護職の働き方については、こちらの記事で詳しく説明しています。
介護職の仕事内容と1日のタイムスケジュール

仕事内容はもちろんですが、勤務形態も含めて、希望する仕事がなんなのかを考えてみましょう。そうすれば、おのずと、面接で発表できる志望動機がまとめられるはずです。

新しいことを始めるときは、誰だってドキドキしてしまうものです。履歴書や面接では、前向きな気持ちを伝えられるといいですね。