年功序列制度のメリット・デメリット。人事制度から会社を選ぶなら

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「働き方改革」の実現に向けて動き出している日本。

個人としての働き方はもちろん、会社という大きな組織を成立させるさまざまな制度も、これからの時代に適した仕組みへとかわっていくでしょう。

今回は、日本独自の制度でもある年功序列制度のメリット・デメリットを中心に、就職・就職活動前に知っておきたい会社の人事システムについてまとめました。

年功序列制度を理解することで会社の仕組みが見えてくる

あなたが志望している企業や、現在勤めている会社は年功序列制度を採用していますか?

会社の人事制度を理解することは、その会社が大切にしている理念や賃金・昇給条件を知ることにもつながります。

まずは年功序列制度がどのような仕組みで成り立っているのかについて、簡単にご説明します。

年功序列制度とはどんなシステムなのか

そもそも、年功序列制度とはどのような人事システムなのでしょうか。

「年功」とは長い年月にわたる功績や積み上げた経験を指します。序列は順番に並べるという意味です。

年功序列制度は、簡単にいえば、長く働けば働くほど、また年齢を重ねれば重ねるほど役職や賃金が上がっていく制度を指します。

つまり、勤続した年数や年齢に応じて役職や賃金を上昇させる人事制度を、年功序列制度と表現するのです。

小説やドラマのなかでも、会社で40~50代のサラリーマンが「次の昇進は順番からいって君だろう」と肩を叩かれているようなシーンを観たことがあるかと思います。

年功序列制度に従えば、勤務した年数や年齢に応じて賃金や役職が上がっていくので、こういったドラマのように、次の昇進や役職の見通しが立ちます。

日本でうまれたこの年功序列制度は、今でも多くの企業で採用されている人事システムです。

年功序列制度と終身雇用制度の切っても切れない関係

では年功序列制度はいつ頃うまれた人事制度なのでしょうか。

日本の経営の特徴的な人事制度でもある年功序列制度は、第二次世界大戦後の昭和20年代から高度経済成長を迎えた昭和60年代に定着した日本型の雇用システムです。

日本では戦後、

  • 企業組合
  • 年功序列制度
  • 終身雇用制度

という、3つの雇用制度を中心に会社が成り立っていました。

企業組合とは、

  • 事業者
  • 勤労者
  • 主婦
  • 学生

など、4人以上の個人の方々が組合員となって、資本と労働をもちより、自分たちが働く場を創造した組織を指します。

事業者以外の人でも組合員として加入でき、働き方や賃金についても組合員たちで決めることができる、非常に自由度の高い組織です。

年功序列制度は前述したように、年齢や勤務した年数によって賃金や役職が上がっていく人事システムです。

第二次世界大戦後に広まったこの年功序列制度は、今でも日本企業の雇用システムとして継続されています。

終身雇用制度は社員を定年まで雇用する人事制度を指します。

終身雇用制度も年功序列制度と同じように、戦後、労働者を確保するために採用された制度です。

年功序列制度に従えば、20~30代では少ない賃金も、40~60代になると増えていくので、年功序列制度と終身雇用制度は、とても相性の良い関係だったといえるでしょう。

1990年代ごろまでは、この年功序列制度と終身雇用制度の2つの歯車が上手に回り、日本の企業の軸となっていました。

しかし平成に入って起こった「バブル経済」が崩落すると、その不況の煽りを受けた企業が人件費削減のためにリストラを慣行します。

このリストラによって失業者が一気に増大しただけでなく、企業は正社員を減らし、派遣社員など非正規労働者を増やすようになりました。

結果、終身雇用制度を維持する企業も減ってしまったのです。

バブルが崩壊した1990年代以降、日本経済は国内だけでなく、世界に目を向けた経済の自由化を推し進めるグローバル経済へと移行しています。

戦後、日本企業に確立された終身雇用制度や年功序列制度などの雇用システムをこのまま守っていてもよいのかという、人事システムについての議論が巻き起こっているのです。

将来の見通しが立つ!?年功序列制度のメリット

年功序列制度のメリットについてご説明します。

年功序列制度は、前述したように勤務した年数や年齢によって会社での立ち位置が決まります。

そのため、社内で今後自分がどのような役職へ就くことになるかについて、ある程度見通しをたてることができるのです。

例えば、20代のころはで平社員でも、30代で係長、40代で課長など、長く務めることで役職があがっていきます。

収入の予想が立てやすいので、「このくらいの時期までにこれくらいの貯金ができる」など、貯蓄についても計画が立てやすく、長期的なライフプランを立てやすいというメリットがあります。

将来への安定性が高いので、女性は結婚・出産など、人生の節目をいつ迎えるかについての計画も立てやすいでしょう。

将来の安定を重視する方は、年功序列制度があっているかもしれません。

また、私たち日本人の文化として、年上を敬うというマナーがあります。

年功序列制度では、年齢に応じた先輩・後輩の関係が重んじられるため、年長者が中心となった結束力が生まれやすいといわれています。

例えば、自分より年齢が下なのに、役職は上であるなどということがないので、社内の秩序が守られやすく、人間関係も崩れにくいといえます。

自分より年齢が上の部下を指導するのは、何かと気を使いますよね。

年功序列制度は年長者をたてることで、チームワークも良くなります。

さらに、年功序列制度は、大きな失敗をしなければ自動的に昇給したり、役職に就くことができるため、「会社のために頑張って働こう」という社員の帰属意識も高くなります。

もちろん、新入社員として働きだしてすぐは賃金や待遇も良いわけではありません。

しかし年齢が上がれば会社から社員に対する扱いもよくなることを若いうちから知っているので、20代のうちは我慢して頑張ろうという気持ちが生まれ、離職率も低くなるのです。

自分のペースでしっかりと着実なスキルを身につけたり、周りと競い合わずに仕事がしたいというタイプの人にも、年功序列制度を推奨している会社はおすすめです。

年功序列制度は事業者からみてもメリットがあります。

社員一人ひとりが今すぐに成果を出すというよりも、目先の利益にとらわれず、長期的な見通しで業務を遂行できるので、企業としての将来の計画が立てやすくなります。

このように、年功序列制度には

  • 将来への安定性
  • 良いチームワークが生まれる
  • 会社への帰属意識を高められる

など、さまざまなメリットがあるのです。

頑張っても報われない!?年功序列制度のデメリット

では年功序列制度のデメリットとはなんでしょうか。

年長者が重んじられる年功序列制度は、逆にいえば、若手の社員がどれだけ良い結果を出したとしても、なかなか評価されにくかったり、賃金や待遇に反映されにくいというデメリットがあります。

年長者が中心となってつくられたチームでは、若い社員が自分の意見を言いにくくなり、力を発揮できないことも。

飛びぬけた結果を出したとしても評価されにくい環境は、「能力がないのに自分より良い給料をもらっている」「頑張っているのに昇進できない」など、社員のモチベーションの低下や、仕事への士気が下がってしまうことにもつながります。

また、年功序列制度は、言い換えれば、その会社に所属しているだけでも、年齢が上がれば賃金や役職が上がったり昇給できてしまうので、仕事面で成長する意味が見出せなくなります。

頑張っても、頑張らなくても同じ待遇であれば、仕事は楽な方が良いという考えに向かってしまうことは、会社にとっても非常によくないことです。

「何もしなくても時間がたてばキャリアアップできる」というぬるま湯のような環境では、 新しいことへのチャレンジや、リスクある仕事へ取り組むことが少なくなってしまうことは仕方がないのかもしれませんね。

個人個人のスキルアップに関する意識が低いということは、目まぐるしくかわっていく社会経済や業界への対応が、会社全体として遅れてしまうということです。

また、年功序列制度は、良い成績を残しても評価に直結しにくいだけでなく、逆に何か会社にとって不利益になることや、問題を起こしてしまうと、将来の人事に影響が出ることがあります。

何も起こらなければ賃金や役職も上がっていきますが、何かあれば上がれないかもしれないという状況では、どうしても会社全体の空気が事なかれ主義になってしまいます。

本来なら解決しなければならないような問題を、見ないふりをして社員一人ひとりが見過ごしてしまうことで、徐々に組織が傾いてしまうのです。

挑戦する姿勢を良いとされるグローバル経済のなかで、事なかれ主義の組織は生き残れません。

年功序列制度のもう一つのデメリットとして、人間関係の癒着などの弊害もあげられます。

多少の問題は見なかったことにするといった、いわゆる「なぁなぁ」の関係になりがちな点も注意すべきです。

本人にそんなつもりはなくても、若いうちから長く勤めていることで、取引先と接する機会も増えてきます。

取引先や競合他社とお互いに利益を追求し、高めあっていくような関係でなければ、企業としての成長は見込めません。

また、社員にとってはメリットも多い年功序列制度ですが、事業者は年功序列制度を成立させるために高い人件費が必要となります。

年齢や勤続年数に応じて賃金が上がる年功序列制度では、その社員が結果を出している・いないに関わらず、年齢に応じた給与を支払わなければなりません。

社員が高齢化すればするほど、人件費の高騰が経営を圧迫してしまうことも。

個人での成績や企業の業績が伸びていないにもかかわらず、人件費だけはどんどん増加してしまう恐ろしい状況に陥ってしまうのです。

実績をあげていない社員に高額な人件費をかけることは、ある意味無駄なお金ですよね。

このような状況を改善しようと、近年では大手企業による40代後半から50代を対象とした数千人単位の大規模リストラもありました。

社員の高齢化は確実に会社の財政を圧迫しているのです。

また、年功序列制度では、若手のうちに結果を出しても報われない環境から、優秀な人材が入社してもすぐ流出してしまうというデメリットもあります。

かつては「年齢が上がれば待遇も良くなる」と、優秀な社員の引き留めにもなっていた年功序列制度。

しかし、社会の仕組みが変わり成果主義に移行する会社が増えたことから、優秀な人材がどんどん流出する状況になっているのです。

さらに、年功序列制度の会社が倒産してしまった場合、ほかの会社へ転職しようとしても経験・スキル不足などの理由で不利になってしまうこともあるので、注意が必要です。

年功序列制度にかわってあらわれた成果主義

海外企業では一般的な賃金制度である成果主義。

一体どのような制度なのでしょうか。

成果主義は結果がすべて!成果主義に移行する会社が増えている

年齢や勤務した年数によって賃金や役職を決める年功序列制度とはちがい、個人の能力や実績を評価する考え方を成果主義といいます。

一定期間内の個人の業績や成果を評価し、賃金や昇進に反映する制度です。

実力を重視しているため、若い人や中途で雇用された人でもキャリアアップが可能となります。

近年、年功序列制度から成果主義へと人事制度を移行する会社が増えているのはなぜでしょうか。

結果を出していないにも関わらず、年齢に応じた給与を支払わなければならない年功序列制度は、会社にとってデメリットも大きい雇用システムです。

  • 人件費の削減
  • 終身雇用制度の崩壊
  • 雇用スタイルの多様化

など、さまざまな理由から成果主義へと移行する会社が増えています。

不安定な日本経済のなかで、人件費の削減はもっとも重要視されるポイントです。

終身雇用制度には、優秀な人材を長期間確保できるというメリットもありますが、業績悪化を受けて雇用を継続できなくなるケースは年々増加しているようです。

そもそも年功序列制度や終身雇用制度は、会社の業績が右肩上がりに成長することを前提として成立する雇用制度です。

現在の縮小傾向にある日本企業は、成果主義に移行しています。

また、かつては正社員が主だった雇用スタイルも、

  • 契約社員
  • アルバイト
  • 派遣社員

 
など、さまざまな非正規雇用の形が増えています。

正社員、非正社員などの雇用形態に関わらず、成果主義による平等な評価が求められているのです。

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派遣社員と正社員の条件の比較

成果主義のメリット・デメリット

では、成果主義のメリット・デメリットとはなんでしょうか。

成果主義を掲げた会社は、優秀な人材が集まりやすくなります。

実績を出した分だけ公正に評価される環境が、社員のモチベーションを高めてくれるのです。

やはり、自分が頑張った分だけ報われる労働環境では、誰でも成果を出そう!と仕事に対するやる気も高まっていくものです。

自分の力を試してみたい人や、若いうちから目標をもって仕事にチャレンジしたい人は、成果主義を取り入れている会社があっているかもしれませんね。

成果主義は、社員の仕事に対するやりがいやモチベーションのアップにつながるだけでなく、雇う側からしても、業績に応じた賃金を支払えばいいのでコスト管理しやすいというメリットもあります。

良いことだらけのように感じる成果主義という制度ですが、もちろんデメリットもあります。

まず、成果主義は個人の業績や成績に基づいて賃金や昇進が決められるので、月ごとや年ごとの賃金額の変動が大きくなります。

年功序列制度とはちがい、何歳でどの役職に就くかなど、将来の見通しが立てにくいというデメリットがあります。

できる社員とできない社員という線引きがはっきり数字としてあらわれるので、社員間の賃金格差も生じやすく、いわゆる「勝ち組」と「負け組」がはっきりわかれます。

能力によって「勝ち組」と「負け組」が明らかになってしまうと、負けてしまった側のモチベーションがなくなってしまうなんてことになりかねません。

このように二極化された環境では、やる気と実力のある人は昇進していき、モチベーションの低い人は何年勤めてもキャリアアップすることができず、「負け組」のままです。

成果主義のもとでは、「勝ち組」と「負け組」ががっちりと固定化されてしまうのです。

また、自分の頑張った評価が賃金や昇進に反映される環境では、当然社員は多くの成果を出そうと頑張ります。

「この成果は自分の力によるものだ」という主張をしなければならないので、手柄争いから足の引っ張り合いが起きやすいといわれています。

年功序列制度のように、年齢が上がれば自然と役職が上がるわけではないので、年齢が自分より下でも、能力が高ければ役職も自分より上であるといったことも起こります。

若いリーダーの下で年配の社員が働くという環境は、長い間年功序列制度が当たり前であった日本人にとって、まだまだ慣れないも体制でしょう。

いくら個人の実力が評価のすべてであるといっても、年齢が上の人に対して明らかに年下の社員がラフな態度をとるという図は、はたから見ていても気持ちの良いものではないと感じてしまいます。

日本人の年上を敬うという文化から考えても、年下が年上に指示をするという労働環境のあり方に抵抗があるのかもしれませんね。

また、成果主義のもとではどうしても一人ひとりが個人プレーに走ってしまうことが多く、チームワークが悪くなってしまうことがあります。

自分の成績をあげることに必死になって、チームワークが軽視されてしまうのです。

そのような社員が複数でてくることで、職場全体の雰囲気もどんどん悪化していきます。

さらに、成果のみを追い求める会社の体制は、近年問題となっている過労死や、ブラック企業を増加させることにもつながっています。

成果主義は、社員のメンタルや体力までもむしばむことがあるのです。

業績がどんどん向上していく裏に、さまざまな労働トラブルが起こりやすいともいえます。

一時は、年功序列制度をやめて成果主義へ移行しようと、成果主義のメリットばかりが取り上げられていましたが、どんなものにもデメリットがあるものです。

良い面だけでなく、悪い面についても十分考慮しながら、転職・就職活動をすすめていきましょう。

成果主義と能力主義の違い

成果主義はよく能力主義と混同して考えられがちですが、この二つは別物です。

能力主義は、簡単にいえば個人の能力や人物を評価して、賃金や昇進に反映させる考え方です。

こう書くと成果主義と同じように思えますが、能力主義は結果だけでなく、その結果がでるまでの過程や取り組みを加味して評価がつけられます。成果主義は結果、つまり成績が評価のすべてです。

  • 人間性
  • 職歴
  • 取得資格

なども評価の対象となるので、成果主義のように成績を出せば必ず評価が上がるというわけではありません。

能力主義は、幅広く高度な能力をもった人物、つまり「能力をもっている社員」が評価されるという賃金制度です。

能力があったにも関わらず、たまたま結果に結びつかなかった人でも、その過程をふくめた評価が与えられます。

一方、成果主義は能力主義のように過程や個人の能力は無視され、業務の成果だけで昇進や賃金が決まるので、ある意味わかりやすく、平等です。

年齢に左右されない公平な評価制度が、多様化する日本の働き方とマッチしているのかもしれません。

自分にぴったりの働き方を探そう

現在の日本企業は、高度経済成長期に確立された年功序列システムから、成果主義へと移行しているように思えます。

しかし、年功序列制度のすべてがよくないというわけではありませんし、成果主義に基づいた会社が必ずしも成功しているというわけではありません。

成果主義だけを追い求めれば、ブラックな労働問題が起こりやすくなり、年功序列制度を続ければ、若い人たちの勤労意欲をそいでしまうことにもつながります。

どちらにも、それぞれのメリット・デメリットがあるのです。

日本の企業が世界で生き残るためには、古い制度の良い部分は残し、新しいシステムを取り入れる人事制度の構築が必要不可欠です。

なかには、現在進行形で年功序列制度のなかに成果主義を取り入れようと、雇用や昇進の仕組みを切り替えている会社もあるかもしれません。

「志望企業に合格したい」という強い思いは、ときにその会社のネガティブな部分から目をそらしてしまうことにつながります。

転職や就職は、人生の大きな節目です。

自分にあった働き方を十分考慮しながら、慎重に転職・就職活動をすすめていきましょう。

現在の転職事情と採用市場も参考にしてみてください。

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