保育士が疲れる理由。激務、保護者、人間関係に疲れたらどうしてる?

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「小さい子供と毎日遊んで楽そうだね。」と誤解されることもある保育士。

たしかに保育士は、かわいい子どもたちに囲まれ、毎日は充実していますが、楽どころか、給料が安い・帰れない・きついことから「新3K」と呼ばれているのが実態です。

多忙な毎日を送り、くたくたに疲れている保育士も少なくありません。保育士の仕事はなぜこんなに疲れるのでしょう。理由と対処法についてまとめました。

仕事が多くて労働時間が長い

保育士が仕事で疲れる第一の理由に、仕事の量が多くて就業時間が長く「それだけ体力的な疲労が大きい」という点が挙げられます。

保育園は、7時から18~19時ごろまで11~12時間開園しているところが多くなっていて、園児は次のようなスケジュールで1日を過ごしています。

▼保育園の1日のスケジュール(イメージ)
保育園の1日のスケジュール画像
(出典:一般財団法人 大阪市民共済会)

保育士の就業時間は、1日8時間です。保育士たちは、早番(開園時から8時間勤務)、中番、遅番(閉園時間まで勤務)など、12時間の間で8時間ずつシフトを組んで働くことになります。

ただ、保育士の仕事は量が多いため、1日の仕事が8時間の就業時間内に終わるとは限りません。イベント前などは仕事が増えるため、定時に帰れなくなることもあります。

ある調査によると、経験年数が4~10年の保育士の仕事にかかる時間は、平均して1日9時間40分という報告もあります。

保育時間 約7時間
保育記録の作成 約23分
事務的な仕事 約22分
その他
(保育所内の掃除や整理、
会議の打ち合わせの報告
など)
約55分
休憩時間 約30分
合計 約9時間40分
(休憩時間を除くと約9時間10分)

参照:社会福祉法人 日本保育協会「平成26年度保育士における業務の負担軽減における調査報告書」

このように保育士の仕事にかかる時間が規定の8時間を超えてしまうと、仕事を終わらせるための時間外労働が生じてしまいます。

夜遅くまで残業をしたり、家でできる仕事は自宅に持ち帰ったりすることになるのですが、保育士の半数の保育士は「勤務時間外の仕事が負担」と感じています。

また、保育記録や書類作成などのいわゆる「書き物」は、非正規職員(パート、臨時職員など)ではなく正規職員が行う仕事なので、非正規職員の占める割合が多い職場ほど、正規職員1人当たりに対する仕事の負担はさらに大きくなります。

イベントが多く準備が大変

残業や持ち帰り仕事を増やす大きな要因が、イベント(行事)の存在です。

保育園のスケジュールは、一年を通してさまざまなイベントが盛り込まれています。大きなイベントは、運動会、発表会、作品展など。そのほか、バザー、クリスマス会、毎月のお誕生会、遠足など、子どもたちが喜ぶイベントがたくさんあります。

保育園のイベントは、打ち合わせや準備にとても時間がかかるのです。たとえば、運動会や発表の出しもの、衣装、振り付けなどは、保育士がアイデアを出してプランを立てなければなりません。

小道具、衣装、お知らせのプリントなども手作りで、準備には時間がかかるので、保育士が手分けをして残業や持ち帰りで作成します。

また運動会や発表会は、子どもだけでなく保護者もとても楽しみにしているので、イベントが盛り上がるような工夫も必要です。

練習の際には、嫌がる子どもが出ないように指導をし、イベント当日は子どもが楽しくイベントに参加できるよう、楽しい雰囲気を作ってあげることも大切です。

イベントを経験するたびに、子どもの成長が感じられ、保育士自身の楽しい思い出も増えていくので、とてもやりがいはあります。ただ、仕事の量が多いので心身の疲労はどうにも避けられません。

体力的な負担が大きくてクタクタ

保育士は、たくさんの子どもたちのお世話をしたり一緒に体を動かして遊んだりして1日を過ごします。意外に重労働なので、体力勝負の仕事と言えるでしょう。

保育士は、こまごました世話をするためにも、子どもをひんぱんに抱っこしたり持ち上げたりするので、日常のお世話だけでも体力を消耗します。

小さな子供が相手なので、子どもと目線をあわせるために中腰の姿勢をとらなければならず、腰には負担がかかります。20代の若い保育士でも腰痛持ちの人が多いといわれるくらいです。

また、子どもの世話以外にお掃除や片付け、昼寝布団を敷いたりたたんだりと、さまざまな雑用があるので、疲れても休憩して体力を回復させる暇もありません。

あまり休憩が取れない

保育士の休憩時間は、労働基準法34条によって、労働中にとるべき休憩時間が定められています。「労働時間が6時間以上の場合は45分以上」「労働時間が8時間以上の場合は1時間以上」の休憩が必要です。

ところが、休憩時間は30分以下、またはほとんどとれないのが実情です。

保育士は、基本的に園児の昼寝にあわせて休憩をとるのですが、子どもたちがなかなか寝付けなかったり途中で起きたりすると、休憩時間が少なくなってしまいます。

食事は手の空いているときに各自が早食いで済ませることも多く、タイミングが悪いとなかなかトイレにも行けないので、女性保育士には膀胱炎にかかりやすいのです。

また多くの保育士は、子どもが寝て静かになっている時間を利用して保護者あての連絡帳の記入、書類や資料の作成を行うので、休憩がほとんど取れないことはそう珍しくありません。

プライベートもゆっくり休めない

せめて、休日くらいは仕事のことを忘れてリフレッシュしたいもの。しかし保育士は持ち帰り仕事が多く、休日も自宅で仕事をしなければならないことも多いのです。

とにかく保育士の仕事は、日案・週案・月案(指導計画)、配布物、児童票といった書き物が多く、就業時間内にはなかなか完成しません。ほとんどの保育士が持ち帰って帰宅後や休日に作成しています。

さらにイベントが近づくと、お誕生カード、小道具、衣装など準備に手がかかる物は自宅で作成しないと間に合わなくなることもあるのです。

このような「持ち帰り仕事」については、約70%の人が負担を感じています。(平成25年度「保育所における業務改善に関する調査研究報告書)

さらに主婦や育児中の人は、帰宅したら休む間もなく家事や育児もしなければならず、家庭との両立で体を休める時間がさらに削られてしまいます。

子どもの相手で神経が疲れる

子どもたちと一緒に過ごすは楽しいのですが、保育士はただ遊んであげるだけではなく、常に神経も張りつめておかなければならないので、神経もドッと疲れてしまいます。

保育士が怖い表情をしていてはいけないので、子どもの前ではいつもいつもニコニコしていることが求められます。疲れているとき、イライラしているときは正直疲れますよね。

また、子どもを預かっている間は、子どもたちがケガをしないか、どこか体の調子が悪くないか、けんかしないか、常にすべての子どもに目を光らせておかなければなりません。

もし子どもにケガや事故などのトラブルが起これば保育士の責任が問われてしまうので、保育中はとても神経を使います。

職場の人間関係が大きなストレス

保育士が辞めたいと感じる原因で最も多いのが、職員の人間関係だといわれます。保育園は、職員同士の人間関係が難しい職場でもあるのです。

調査によると、保育士の9割は「職員間で、仕事の分担を柔軟に変更したり助け合ったりしている」「仕事上での悩みはお互いに相談しやすい」と感じています。

しかし約6割の人が「職員間での人間関係」「職員と管理職の関係」になんらかの不満を持っているとも答えています。

(参照:保育士における業務の負担軽減に関する調査研究報告書 )

各自で人間関係が悪くならないよう気は使っているものの、実際には思い通りにいかないことが多いのですね。

保育士はなおさら、どの職員も多忙で慢性的にストレスがたまっているため、お互いのちょっとしたことに余計にイラッとして、すれ違いが起こりやすくなるのかもしれません。

保護者対応に気を使う

悪い印象を持たれたりクレームが来たり、保護者との間には思わぬトラブルが起こりやすいもの。

特に保護者のトラブルで多いのがクレームです。その内容は、保育園、よその子供、保護者同士のトラブル…とさまざまです。

「そんなこと言われても…」と戸惑ってしまうような理不尽な意見にも、保育士は保護者を立てて誠実な態度で対応しなければなりません。

保護者とは信頼関係を保ちながらいつも気持良くコミュニケーションが取れると良いのですが、さまざまなタイプの保護者がいるので、保護者対応にはかなり気を使います。

仕事に疲れた保育士がとりたい対処法

新3Kと呼ばれる重労働で、心身が慢性的に疲労してしまう保育士は少なくありません。

「保育士の仕事や子どものことは好きだけど、気持ちと体がついて行かない」「辞めたい」と思った時は、どのような対処を取ればよいのでしょうか。

作業の効率化を図り、仕事の負担を軽減する

保育士の大きな負担になっている長時間労働を改善することが大切です。できるところは作業の効率化を図り、労働時間を短縮するように工夫してみましょう。

保育士の労働時間を延ばしているのが書き物の作成時間です。

現在、厚生労働省の「保育園などにおける業務効率化推進事業」により、保育園のICT化が推奨され、全国の保育園では保育記録や勤怠管理など事務作業の効率化が進んでいます。

それでも保育園の書き物はいまだ手書きも多いので、可能な部分はなるべく電子化して、処理にかかる時間を短縮させていきましょう。

書き物に時間がかかって困っている人は、あまり効率が良くない方法をとっている可能性があります。

読みやすい文章を効率良く作成するためには、文章力やパソコンのスキルを高めることも大切ですし、手っ取り早くテンプレートを活用するのもおすすめです。

改善を試みてもなかなか仕事が終わらない場合は、そもそも用意されている仕事の量が多すぎる可能性もあります。たとえば、イベントの企画内容がこり過ぎて無駄な会議や準備をする必要が生じていないか、職員同士で見直すことも必要です。

残業や持ち帰り仕事が減れば、自宅で心身の疲労をリフレッシュできるようになり、仕事は多忙でも「また頑張ろう」という明日への活力が生まれるはずです。

職場での対人関係は改善の余地がある

「女性ばかりで人間関係に苦労する職場」というイメージのある保育園ですが、どの職場も人間関係が悪いわけではありません。中には和気あいあいと良い雰囲気を保っている保育園もあります。

女性は、ちょっとしたことから人間関係がこじれて敵や派閥が生じやすいものの、基本的には他人とうまくやっていきたい気持ちが強いのです。

ですから、お互いが思いやりや気配りを心がけ、コミュニケーションを潤滑にしていくことで、職場の雰囲気は改善されていきます。

職員同士で心がけたいコミュニケーション
  • 職員同士の挨拶を軽視しない
  • 口角を上げ、笑顔で接する
  • 相手の目を見て会話する
  • きちんと相手の話を聞く
  • 他人の悪口には同調しない
  • 苦手な人こそ避けずにコミュニケーションを心がける
  • 自分の方針を押し付けすぎない

これらの基本的なコミュニケーションは、意外にできていないことが多いものです。プライドが邪魔して省いてしまうことが多いのですが、できていないと他人との間に誤解が生じやすくなるので、意識して行っていきましょう。

職場を変える、転職するという手もあり

保育園の方針や待遇は職場によって異なります。

仕事の負担や人間関係の良し悪しは、保育園によって差が出てしまうことがあるので、現在の職場に疲れてしまった場合は、ほかの保育園で働くことも考えてみましょう。

職場が変われば、人間関係の悩みや激務の負担から解放され、いきいきと働けるようになる可能性もあります。

また、疲労が強く保育園の仕事を続けることが難しいと感じた場合は、無理をするのも良くありません。適性を見直し、思い切って転職してみるのも一つの手です。

疲れるけどやりがいのある保育士の仕事

「とても疲れるけど、やりがいが大きいから頑張れる!」というのが保育士からよく聞かれる声です。

つらい時は辞めたくなるかもしれませんが、もう一度初心に戻って「保育士のやりがい」を振り返ってみましょう。そして、まずは改善できることから試み、働きやすくなるように工夫してみませんか。

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保育士のやりがいと魅力を実感する瞬間7つ

そのうえで「どうしても転職しかない!」と決意が固まった方は、良い職場を見つけるため転職に関する情報を数多く収集されることをおすすめします。

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